LPガス業界の商習慣是正へ省令改正が決定、罰則や実効性確保に向けた方策は?法制度・規制(2/3 ページ)

» 2023年08月03日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

「三部料金制」の徹底に向けた対応方針

 三部料金制とは、LPガスの基本料金、従量料金の他に、配管・ガス器具等の貸付料金等の「設備料金」を設けた料金体系である。

表1.LPガス三部料金制の構成 出典:液化石油ガス流通WG

 2017年の液石法省令、運用・通達の改正及び取引適正化指針の制定により、LPガス事業者の自主的な取り組みとして、「三部料金制」の導入が求められたが、石油ガス流通・販売業経営実態調査(2022年度)によれば、三部料金制を「適用している」事業者は12.5%、「一部適用している」事業者は20.8%に留まっている。

 液化石油ガス流通WGでは、液石法施行規則の改正を行い、ガス契約に係る料金は、基本料金、従量料金及び設備料金の「三部料金制」として、消費者に対してこれらの料金を請求するときは、算定根拠を通知することを義務付ける案を示している。

 また、「設備料金」に計上可能なものはガス配管やガス機器に限定し、電気エアコンやインターホン等については、「設備料金」として消費者に請求することを禁止する。

 さらに賃貸集合住宅においては、ガス配管やガス給湯器も、本来は賃貸集合住宅オーナーが自らの費用で設置し、家賃として入居者から費用回収すべきものである。

 よって賃貸集合住宅においては、ガス料金として、消費設備費(配管や給湯器等)を計上することを禁止する。三部料金制の体系は維持する必要があるため、設備料金は「該当なし」と記載することが求められる。

 ただし、LPガス事業者と消費者の間で、個別に警報器やストーブなどのガス器具の「貸与契約」を締結することは可能であり、この場合は、貸与費用として別途、料金を回収することとなる。

 なお、三部料金制導入の実効性を高めるため、先述の図2と同じく、液石法施行規則を改正し、罰則規程(上記「過大な営業行為制限」と同じ)のある条文に明確に位置付けることとする。

 三部料金制の徹底により、「無償貸与」の原資が失われるため、今後は入居者との「貸与契約」に切り替えていくことが想定される。入居を決めた後では、「貸与契約」の選択の余地は実質的に無いものの、料金の透明性や納得性の観点からは大きな進展であると考えられる。

 改正省令(施行規則)は、上記「過大な営業行為制限」と同じく2024年4月の公布とするが、施行はその3年後、2027年4月を予定している。これは、LPガス事業者の料金請求システムの改修等に一定の時間を要することを配慮しての猶予期間であるが、一部委員は施行を早めるよう意見を述べている。

賃貸集合住宅におけるLPガス料金の事前通知

 賃貸集合住宅では、LPガス料金を支払うのは入居者でありながら、入居者はLPガス事業者を選ぶことは出来ず、オーナーが選択したLPガス事業者と契約締結せざるを得ない。

 上記の「三部料金制」の徹底により、今後はLPガス料金の適正化が進むと考えられるが、入居後のトラブル防止の観点からも、入居希望者に事前にLPガス料金等の情報を提供することは重要である。

 このため経産省と国交省は、不動産仲介業者等から入居希望者へLPガス料金の情報提供を要請する通知を、2021年に発出済みである。

図3.賃貸集合住宅における入居前のLPガス料金情報提示の取り組み 出典:液化石油ガス流通WG

 しかしながら、エルピーガス振興センターによるLPガス事業者向け調査によれば、不動産管理会社等へのLPガス料金の情報提供について、「情報提供済み」との回答は17.0%、「一部情報提供済み」との回答は35.2%に留まる。

 このため、液石法施行規則の改正により、LPガス事業者は、入居希望者が賃貸借契約を締結する前に、入居希望者に直接又はオーナー、不動産管理会社、不動産仲介業者等を通じて、当該住宅のガス料金等を提示するよう「努力義務」を課すこととする。

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