賃貸集合住宅における機器の「無償貸与」や、過大な営業行為など、その商習慣が問題視されているLPガス業界。政府ではその是正に向け、省令改正などを行う方針だ。このほど省令改正に向けた具体的なスケジュール案や、取り締まりの強化および実効性の確保策が示された。
LPガスの販売は「液化石油ガス法」(液石法)に基づき、自由な参入(登録制)や、自由な料金設定が可能であり、LPガス事業者数は約1万7000社に上る。
LPガスは全国の約4割、2,200万世帯の家庭用燃料として利用されているが、賃貸集合住宅における機器の「無償貸与」や、過大な営業行為などは、消費者利益を損なう商慣行であるとして、資源エネルギー庁において対策が検討されてきた。
「液化石油ガス流通ワーキンググループ(WG)」の第6回会合では、省令改正を含む、取り締まりの強化および実効性の確保策が示された。
LPガスにおいては、国による料金規制等は無いため、LPガス事業者は自由に料金を設定することが可能である。賃貸集合住宅では通常、集合住宅全体で1つのLPガス事業者と契約するため、個々の入居者ではなく、集合住宅のオーナーがLPガス事業者を選択することとなる。
このため、複数の消費者(需要家)の長期囲い込みを目的として、LPガス事業者から集合住宅オーナーに対して、様々な機器の「無償貸与」が行われている。「無償貸与」される機器は、ガスコンロ・給湯器等のほか、電気エアコンやインターホンなども含まれる。
近年では、オーナー側からLPガス事業者に対して、無償貸与や現金によるリベートを要求するケースも増えており、LPガス事業者が疲弊する一因となっている。
無償貸与された機器の費用は、多くの場合、LPガス料金を通じて入居者から回収されるため、当該集合住宅のLPガス料金は高騰することとなる(その分、家賃が抑制されて見える)。
このように賃貸集合住宅では、消費者はオーナーが選択したLPガス販売事業者と契約締結せざるを得ないことや、戸建住宅では長期のガス契約もあることから、WGでは、オーナーや不動産管理会社、建築事業者、消費者等に対して、「正常な商慣習」を超えた利益を供与することを禁止する案が示された。
具体的には、液石法の施行規則(省令)を改正し、過大な営業行為の制限に関する条文を新設することとする。ただし、「正常な商慣習を超えた利益」を明確に線引きすることは難しく、競争制限的に働くおそれもある。よって、定性的な記載とならざるを得ないなか、施行規則、解釈通達及びガイドラインにおける記載を今後検討する予定である。
また改正施行規則では、賃貸集合住宅のオーナーまたは戸建住宅の消費者等との間で、LPガス事業者の切替えを制限するような条件を付した契約締結等を禁止する。「LPガス事業者の切替えを制限するような条件」とは、月々のガス料金に照らして、高額な違約金規定や、無償貸与設備の高額な買取条項などが該当する。
液石法第16条第2項に違反する場合、
などの罰則が設けられており、一定の実効性が確保されている。
改正省令(施行規則)は2024年4月の公布、同年7月の施行を予定している。施行日以降の新規契約交渉や既存契約の延長において、過大な営業行為が禁止されるが、遡及適用はされない。
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