LPガス業界の商習慣是正へ省令改正が決定、罰則や実効性確保に向けた方策は?法制度・規制(3/3 ページ)

» 2023年08月03日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]
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改正法令の実効性確保のための方策

 液石法施行規則の改正により、一部罰則付きの義務化を行うが、改正施行規則の施行前・施行後いずれにおいても、制度の実効性を高めることが求められる。

 このため、「過大な営業行為の制限」に関しては、まずはLPガス事業者自らが改正制度の順守を宣言することを促すこととする。国はその宣言を集約し、資源エネルギー庁のWebサイトで公表することにより、消費者が宣言済みの事業者であるかどうかを知ることができる仕組みとする。

 また施行後は、エネ庁Webサイトに投稿フォーム(匿名可)を開設し、消費者等からの情報提供を受け付け、得られた情報を基に必要に応じて取り締まりを実施することとする。

 また三部料金制については、2027年の施行を待たず早期に三部料金制への移行を促すとともに、早期に移行したLPガス事業者の名称を公表し顕彰することを予定している。

図4.改正法令の実効性確保のための方策 出典:液化石油ガス流通WG

 また、LPガス商慣行の適正化に向けては、LPガス事業者だけでなく、賃貸集合住宅や分譲戸建住宅に関係する、集合住宅オーナー、不動産管理会社、不動産仲介業者、工務店、建設業者等における対応も必要となる。このためエネ庁は、国土交通省や公正取引委員会等と連携し、フォローアップを行うこととする。

戸建住宅の貸付配管(無償配管)への対応

 ここまで主に、賃貸集合住宅におけるLPガス商慣行の是正を述べてきたが、戸建住宅においても、LPガスの特殊な商慣行が存在する。

 無償配管(貸付配管)とは、戸建住宅を新築する際に、工務店や建設業者が、提携先のLPガス事業者に無償で消費配管の屋内工事をさせる商慣行であり、結果として、配管工事費は住宅建築費には含まれず、住宅価格が安く見えることとなる。

 新築時に配管費用(20〜30万円)を負担したLPガス事業者は、15年程度の長期契約の中で、LPガス料金とともに費用回収していくこととなる。

 このような場合、消費者(居住者)がLPガス事業者を変更(旧契約を解約)しようとすると、旧LPガス事業者は貸付配管の費用精算を求めることになる。ところが、消費者(居住者)側が支払いを拒否することがあり、これまで多くの訴訟事件が発生している(原告:LPガス事業者、被告:消費者)。

 これまでの裁判例としては、「不動産の付合」により、配管の所有権が設置時に消費者に移転してしまっているため、解約時に配管を消費者に売却するという合意自体が原始的に履行不可能とされ、LPガス事業者側が敗訴する裁判例が多数存在している。

図5.戸建てにおける貸付配管に係るこれまでの裁判例 出典:液化石油ガス流通WG

 WGでは現時点、この貸付配管については、その商慣行の是非や改善策について具体的な方針は示されていない。三部料金制を徹底した上で、適切な減価償却を反映した精算金を明確化することにより、償金請求権が認められる(LPガス事業者側が勝訴する)可能性が高まるとの見解を述べるに留まっている。

 戸建住宅の貸付配管はごく一般的な商慣行であり、現在、LPガス事業者は、配管を自社資産に計上したうえで減価償却している。もし一律に、配管の所有権が設置時に消費者に移転するとみなすならば、配管を居住者に「貸与契約」することや、三部料金制の「設備料金」として請求することにも、矛盾が生じ得る。

 多数の既存物件が存在することから、業界の混乱を招かぬよう、早期に明確な方針を示すことが望まれる。

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