燃料の脱炭素化で期待される「合成メタン」、CO2排出に関する制度設計が急務に法制度・規制(1/4 ページ)

都市ガスの脱炭素化手法の一つとして今後の利活用が期待されている「合成メタン」。一方、合成メタンによるCO2削減効果の定量化手法や、その取り扱いに関する制度は整備されておらず、その確立が急務となっている。

» 2023年06月23日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

 水素は、電化が難しい熱利用の脱炭素化や電源のゼロエミッション化に向けた重要な技術であり、水素と炭素を原料とする合成メタンや合成燃料は、カーボンリサイクル製品と位置付けられている。

 また、2023年6月に改定された新たな「水素基本戦略」では、水素そのものだけでなく、アンモニアや合成メタン、合成燃料等も基本戦略の対象とされている。特に、都市ガスの2050年カーボンニュートラル実現に向けては、合成メタン(e-methane)がその中核的な役割を果たすと期待されている。

図1.2050年ガスのカーボンニュートラル化の実現に向けた姿 出典:日本ガス協会

 しかしながら、合成メタンはその燃焼時にはCO2を排出するため、「企業活動レベル」及び「国レベル」それぞれについて、CO2排出の取扱いを明確化する必要がある。

 このため合成メタンの普及に向けて、メタネーション推進官民協議会では、大規模サプライチェーンの構築やコストダウンなどのほか、CO2の取扱いに関する制度・ルールの検討が進められている。

合成メタンの利用に係る「国レベル」の論点

 合成メタンのコスト内訳の大半を水素が占めるため、安価で大量のグリーン水素が入手可能な海外でメタネーションを行い、日本に輸入するプロジェクトが複数進行中である。

表1.海外合成メタン製造プロジェクトの一例 出典:大阪ガス

 海外で合成メタンの製造(メタネーション)を行う場合、CO2の回収は合成メタンの製造国(図2のA国)で生じるが、CO2の排出は合成メタンの利用国(日本)で生じることとなる。

 現在各国は、IPCCのガイドラインに基づき、温室効果ガス(GHG)インベントリを作成しているが、現在のIPCCガイドラインは、合成メタン等のカーボンリサイクル燃料の製造・利用について明確なCO2排出量の計上方法を示していない。

図2.合成メタンの輸出入に伴うCO2の取扱い 出典:ガス事業制度検討WG

 パリ協定に基づき日本政府が作成したNDC(国が決定する貢献)達成の観点から、合成メタンの利用が日本の排出削減に貢献することが重要であるため、今後、IPCC等の多国間もしくは二国間協議を通じて、CO2削減価値の帰属ルールの整備が必要とされている。

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