2022年3月の「合成メタン利用の燃焼時のCO2カウントに関する中間整理」においては、排出削減のダブルカウントを認めない場合、合成メタンの利用促進の観点からは、図3の「案1」をもとに検討を進めることが望ましい、と整理された。
また、案1の場合、原排出者(回収)側に十分なインセンティブが働くような補完的な仕組みを整備することも重要である。なおEU-ETS改正案においても、カーボンリサイクル燃料の排出量は、CO2原排出者(回収)側で計上する案が示されている。
合成メタンと並び、ガスのカーボンニュートラル化の手段となるのが、バイオガスである。これまで都市ガスでは、省令で定められたCO2排出係数(2.23tCO2/1,000Nm3)を用いることが原則とされているため、バイオガスを利用したとしても、ガス小売事業者の排出係数に違いは生じず、ガスの排出係数は全国一律であった。
そこで、温対法に基づく「算定・報告・公表制度(SHK制度)」の改正により、2024年度報告(2023年度実績)から、バイオガスを供給している場合やカーボンクレジットを活用する場合、図4のように排出係数を算定することにより、事業者別・メニュー別の排出係数を報告できるようになった。
なお、多くの都市ガスでは標準熱量が45MJ/m3であるのに対して、バイオガスでは40MJ/m3程度と熱量が異なるため、日本ガス協会は、算定式の「販売バイオガス量」について熱量補整することを要望している。
なお第6次エネルギー基本計画では、2030年に合成メタンを1%、既存インフラに注入することを目標とするなど、当面の間は、販売ガス量全体に占める合成メタンの比率は小さく、化石燃料メタンと合成メタンが物理的にミックスされて販売されることが一般的と考えられる。
また事務局は、合成メタン利用の類型として図5のように5つのパターンを示し、ガス事業者が供給に関わるパターン③、④、⑤を念頭に、ガス事業者の事業者別・メニュー別排出係数の在り方について、今年度のSHK制度検討会において検討を行う予定である。
なお欧州では、バイオマス由来のCO2を原料とする合成メタンは、バイオメタンであると認識されている。これまで国内の議論では、バイオガス(バイオメタン)と合成メタンは別物として区別してきたが、欧州と同様に、今後はSHK制度を始めとする国内制度・ルールにおいても、バイオマス由来合成メタンをバイオガス(又はバイオガスと同様)の取り扱いとすることとした。
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