都市ガス・熱供給事業者のGHG排出量計算、事業者・メニュー別排出係数の算定を公表へ法制度・規制(1/4 ページ)

温室効果ガス(GHG)を一定量以上排出する事業者に、その排出量の算定と国への報告を義務付けるSHK制度。同制度の報告内容の算出における、ガス事業者・熱供給事業者別の基礎排出係数及び調整後排出係数の導入に向けて、このほど算定方法の詳細や運用方法が議論された。

» 2023年08月04日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

 「温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度(SHK制度)」は、温対法(地球温暖化対策の推進に関する法律)に基づき、温室効果ガス(GHG)を一定量以上排出する事業者に、自らの排出量の算定と国への報告を義務付け、報告された情報を国が公表する制度である。

 SHK制度では、排出者自らが排出量を算定することによる自主的取り組みのための基盤の確立と、情報の公表・可視化による国民・事業者全般の自主的取り組みの促進・機運の醸成を目的としている。

図1.SHK制度の算定・報告から公表までの流れ 出典:SHK制度算定方法検討会

 現在SHK制度では、他者から供給された電気に関しては、電気事業者別・メニュー別の排出係数が利用可能であり、SHK制度の「特定排出者」が排出係数の低い電気を選択するインセンティブを与えている。

 これに対して、他者から供給されるガス(本稿では都市ガスを意味する)や熱(蒸気や温水・冷水)については、省令で定める全国一律の排出係数が適用されている(ただし、実測等に基づく排出係数を使うことは可能)。

表1.ガス・熱のSHK制度における現在の排出係数 出所:SHK制度における算定方法検討会

 都市ガスではすでにバイオガス利用の取り組みも開始されており、今後は水素や合成メタンの注入も増加する予定である。また熱供給についても熱源(石炭や再エネ)の違いにより、排出係数は大きく異なると想定される。

 このため国は、ガス事業者・熱供給事業者別の基礎排出係数及び調整後排出係数(メニュー別排出係数を含む)を導入するため、2023年に省令改正を行った。

 これを2023年度実績(2024年度報告)からSHK制度に反映するため、「温対法に基づくガス事業者及び熱供給事業者別排出係数の算出方法等に係る検討会」において、算定方法の詳細や運用等について検討を行っている。

ガス事業者別排出係数の公表の範囲と対象

 従来、都市ガスの排出係数は、熱量(GJ)当たりの炭素排出量(0.0136 tC/GJ)が設定・公表されてきた。しかしながら、ガスは通常、体積単位で取引されるため、SHK制度の特定排出者による算定の利便性を考慮して、今後公表する事業者別の排出係数の値は、体積(m3)当たりの二酸化炭素の排出量(t-CO2)とする。

 また都市ガスの体積当たり標準熱量は、ガス小売事業者の供給エリアごとに異なることや、各エリアにおける需要家のニーズが異なる可能性もあることから、供給エリアごとに排出係数を公表することも可能とする。

 なお電気分野では、小売電気事業者の排出係数は、供給エリアを問わず一つの係数である。以上を踏まえた、ガス事業者別排出係数公表のイメージは表2のとおりである。

表2.ガス事業者別排出係数公表のイメージ 出典:ガス・熱供給事業者別排出係数算出方法検討会

 ただし、電気では、すべての小売電気事業者(小売実績のある者に限る)が事業者別排出係数を公表するのに対して、ガスでは、事業者別排出係数の公表を希望するガス事業者(ガス事業法に規定するガス小売事業者及び一般ガス導管事業者)のみを対象とする。

 メニュー別排出係数の公表についても、同様に、公表を希望するガス事業者を対象とする。公表対象を限定する理由は説明されていないが、新制度導入直後における事業者負担の軽減などが理由と考えられる。

 このように、ガス事業者により事業者別排出係数の有無が異なるため、事業者別排出係数を公表していないガス事業者から都市ガスの供給を受ける特定排出者は、従来どおり、省令で定める係数(又は実測等に基づく係数)を使用することとなる。

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