kWhとΔkWを同時に約定させる市場システムは、すでに米国PJM等の複数のISO・RTOで導入済みであるため、これらの事例を参考とすることが可能である半面、日本の実情を踏まえた検討を行うことも重要である。
日本では、2030年時点でピーク需要に対する変動性再エネ電源(VRE)の割合は9割を超える見込みであるのに対して、例えば米国PJMではVRE導入量はそれほど多くなく、同時最適ロジックにおいてVREをどのように扱うかは今後の検討とされている。
なお米国においてFIT制度はごく限定的であり、今後日本においてFIT・FIP制度とThree-Part Offerによる同時最適化を融合させることは、世界でも類を見ない取り組みになると考えられる。
また系統規模で見た場合、PJMは日本と同程度の系統容量であるが、NYISO、CAISO、ERCOTは日本の半分以下といった違いもある。
SCUC・SCED(混雑処理)の実装には、発電・需要だけでなく系統模擬も必要であることから、系統容量が大きくなると最適化の計算処理時間が肥大化する。
日本において仮に特別高圧系統(配電用変電所を含む)を計算対象とする場合、数万以上のノードを扱うこととなり、海外でも例がない規模となる。そのため、一般送配電事業者の次期中央給電システムでは、原則各エリア上位2電圧の基幹系統を中心に扱う予定としており(対象となるノード数は4,000〜5,000以上)、最適化の追求と計算負荷のトレードオフを考慮することが求められる。
また燃料調達面をみると、米国ではガスパイプラインが張り巡らされており、燃料調達の不確実性が少ないのに対して、日本は燃料を外航船で輸入する必要があるため、最短2カ月程度といったリードタイムの観点から燃料調達の不確実性が存在する。
よって、日本の同時市場の検討においては、短期的な視点(週間以降)のみならず、燃料の調達面や、中長期的な電源投資等の観点も含めた市場・取引環境の整備の議論とも整合を取ることが必要となる。
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