電力は常に需要と供給を一致させる必要があるため、一定の条件のもとで電力需要が減少すれば、必要となる出力制御量は増加することになる。
これまで一送各社は、短期的な出力制御の見通しを試算するにあたり、前々年度の実績データを基に算定を行っていた。(2023年度試算では2021年度実績)なお、太陽光・風力発電の設備量は、当初想定は2022年8月末時点の設備量に至近の増加量を考慮したもの、更新版では2023年3月末時点の設備量に至近の増加量等を考慮したものとなっており、いずれも現実の設備量を前提としている。
ところが、電気料金の高騰に伴う節電が進んだことにより、一部エリアでは電力需要が想定よりも減少している。例えば中国エリアの4〜6月の需要実績は、当初想定に比べて7%(45万kW)程度の減少となった。
このことも、中国エリアでは当初想定と比べて、再エネ出力制御率が大きくなったことの理由である。
電気料金の高騰に伴う節電と同時に、コロナ禍からの経済回復等に伴う電力需要の増加も一部エリアで見られる。よって、電力需要の減少を一時的なものとして全く考慮しないことは妥当ではない一方、足元の需要減をすべて織り込むことは、過度に保守的な出力制御の見通しとなる(出力制御率が過度に高い数値となる)と考えられる。
今後は、1年ごとの不要な変動を避けるため、複数年の実績を基準とすることなどを検討する予定としている。
晴天日や水量が当初想定よりも増加し、太陽光や水力の発電量が増加することも、再エネ出力制御が増加する要因となる。例えば九州エリアでは、2023年4〜5月は当初想定と比べて、晴天日が12日ほど増加(4月:+2日、5月:+10日)している。
この場合、出力制御日・制御率が増えると同時に、太陽光の発電量・売電量自体も増加しているはずであるので、発電事業者の経済的影響については、別途検証することが望ましいと考えられる。
なお再エネ出力制御は、軽負荷期であり、太陽光出力が比較的高出力となる3〜5月に集中することが自然な姿である。例えば九州エリアの場合、年間制御率は6.7%であるが、4〜6月の制御率実績は18.8%に上る。
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