資源エネルギー庁が2023年度の再生可能エネルギー電源の出力制御について、最新の見通しを公表。その内訳や背景、出力制御の低減に向けた取り組みの状況についてまとめた。
2023年の春は、再エネ電源の出力制御が複数エリアで多発したことが、各種報道を賑わしている。
資源エネルギー庁の系統ワーキンググループ(WG)では、短期的な出力制御の発生可能性について、毎年2回程度、その見通しを示すこととしており、その第47回会合において、2023年度の見通しの更新版が公表された。その内容は表1のとおり、2022年11月に公表されていた当初見通しと比べ、西エリアでは制御率の見通しが大きく増加することが明らかとなった。なお系統WGにおいて、検討の対象としている「再エネ」とは、変動性再エネ電源(VRE:太陽光・風力発電)を意味する。
2023年度の再エネ出力制御見通しが変化した理由は、エリアによって異なるが、代表的な理由は、「1.連系線を活用した域外送電量の減少」「2.需要の減少」「4.晴天日や水量の増加」である。以下ではその要因ごとに確認してみよう。
一般送配電事業者(一送)による短期的な(主に翌年度)出力制御の見通しを試算するにあたっては、一送各社の比較可能性を維持するため、一定のルールが設けられている。
現実の地域間連系線の利用率はエリア・連系線によって様々であり、将来の利用率を正確に予想することは困難であるため、WGでは一定の割り切りとして、蓋然性の高い連系線利用率(各エリアで出力制御が発生する時点)の値として、100%・50%・0%の中から、いずれかを採用することとされてきた(表2の下段:当初想定)。
ところが、全国的に再エネ電源(主に太陽光発電)の導入量が急増するに従い、複数のエリアで同時に再エネ出力制御が求められるようになってきた。従来は、他エリアに対して再エネ余剰電力を送出することで、「下げ代」を確保してきたが、受け取る側のエリア(中三社等)の受電余力が失われたため、域外送電量が当初想定よりも減少することとなった。
結果として、連系線そのものには空き容量が残っている(つまり、連系線利用率が下がる)事態が生じることとなった。
このため一部エリアでは、連系線利用率が低下した実績を踏まえて、想定利用率を見直すこととした。例えば中国エリアにおける4〜6月の連系線利用率の実績は、再エネ出力制御実施日(8〜16時)において平均13%(12万kW)程度であったことを踏まえ、7月以降の見通しは利用率10%として計算している。
なお、表2の中部と関西では、他エリアから再エネ余剰電力を受け取る側であるため、マイナス値として表している。
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