再エネ電力が余剰となる断面において、揚水発電や蓄電池、水電解装置等の活用による需要創出は、再エネ出力制御の低減に向けた有効な対策と位置付けられている。とりわけ系統用蓄電池は、近年導入が加速しており、接続検討の受付は全国で約1,200万kW、契約申込にまで進んだ案件は約112万kWとなっている。
接続検討のすべてが接続契約に至るわけではなく、接続契約から蓄電池の設置までに通常、2年程度を要することに留意が必要であるが、特に北海道や九州エリアにおいて蓄電池の導入予定が進んでいる。
先述の表3のとおり、エリア最低需要は、北海道で292万kW、九州で688万kWであることを踏まえると、これらのエリアでは再エネ出力制御の低減に、蓄電池が果たす役割は非常に大きいと期待される。
なお、これまで北海道エリアでは、調整力不足を理由として、再エネ電源の新規接続にあたり、蓄電池等による変動緩和対策を独自に要件化していたが、2023年7月以降、当該要件は不要とされた。
これまで当該要件のもとで、18件・43万kWの太陽光発電に対して、すでに約19万kWhの蓄電池が併設されていることが報告されている。
これらの蓄電池は当該太陽光発電の出力変動を緩和するために用いるルールであるが、これを順守した上で、系統安定化のために更なる活用を図ることが望ましいと考えられる。今後、風力発電に併設する蓄電池の運転も始まることから、多面的な蓄電池の活用が進むことが期待される。
ここまで「需給制約」による出力制御を報告してきたが、今後は「系統制約」による再エネ出力制御が発生することも想定されている。
2023年3月末時点において、ノンファーム型接続による接続検討は全国で約4,500万kW、契約申込は約970万kWまで増加している。従来のファーム型接続においては、系統の「空き容量」という情報が重要であり、このため一送各社は、空容量マップを公開してきた。
しかしながら、ノンファーム型接続の適用により、「ファーム型接続が可能な枠」という意味での「空容量」という概念はすでに失われている。
よって、今後は空容量マップにおける「空容量」の数値表記を取りやめて、予想潮流として容量超過分を含めた数値を公表することにより、系統の混雑度合を示すこととする。
今後、まずは2024年度を対象として、混雑発生による再エネの出力制御が生じる可能性がある基幹系統・ローカル系統の流通設備を対象に、出力制御の「短期見通し」を公表する予定としており、系統制約による出力制御の「長期見通し」についても、試算方法の検討を進めることとしている。
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