再生可能エネルギーの大量導入に伴い、電力系統の安定化に向けて調整力の確保が重要視されている。資源エネルギー庁ではこうした調整力の確保に向けて、再生可能エネルギー電源自体を調整力として活用する手法について検討を開始した。
太陽光発電や風力発電といった変動性再エネ電源(VRE)の大量導入に伴い、十分な調整力の確保が必要とされており、VRE自体を調整力として活用することが期待されている。
また近年、太陽光発電の普及に伴うVREの出力制御が急増していることから、特に下げ方向の調整力(下げ調整力)の在り方について検討が行われている。
2024年度以降、調整力の調達は全面的に需給調整市場に移行することから、電力広域的運営推進機関の「需給調整市場検討小委員会」の第41回会合において、需給調整市場における下げ調整力の扱いについて整理が行われた。
調整力は、ΔkWとkWhの2つの観点から捉えることができる。調整力により対応すべき事象には、図1のような「予測誤差」や「時間内変動」、「電源脱落」等があり、一般送配電事業者はさまざまな速度の調整力を事前に確保しておくことにより、これらの事象に対応している。
需給調整市場は、事前に調整力の調達を行う調整力ΔkW市場と、ゲートクローズ(GC)以降の実需給断面において調整力の発動を行う調整力kWh市場の二つが存在する。
発電事業者は、相対取引や卸電力取引所を通じて自社電源を最大限活用する(=最大出力で運転する)インセンティブがあるところ、「電源を予約」することにより、上げ調整力を供出できるように、あらかじめ出力を下げておくことや、必要なタイミングで供出できるように電源を起動しておく、などをΔkW市場で求めることとなる。
なお実需給断面では、予約電源だけでなく、スポット市場で約定しなかった電源IIや余力活用電源(容量市場で余力活用契約を締結した電源)の中から、kWh単価の安い順に稼働が指令される。
なお現行制度では、調整力kWh市場において上げ/下げ両方向の稼働指令・取引が行われているのに対して、ΔkWでは「上げ方向のみ」が調達されており、当面、下げ調整力(下げΔkW)については市場調達しないと整理されている。
これは、平常時には自然体で下げΔkWが確保されるほか、エリア内の供給量が需要量を上回ることが見込まれる時には「優先給電ルール」により、下げΔkWを確保することができるためである。
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