優先給電ルールにより電源IIIや再エネを抑制する場合、一般送配電事業者から発電事業者に対する「給電指令」によって出力抑制が行われる。
この時、発電事業者は自身の発電計画を変更する必要はないため、給電指令により、計画と実績の不一致が発生するが、これらはインバランスではなく、給電指令時補給電力として計上する仕組みとなっている。
給電指令時補給電力に対する精算に関しては、給電指令時補給電力料金単価が適用されるが、この給電指令時補給電力料金単価には通常、インバランス精算単価を適用することとなっている。
なお、通常のインバランス精算単価は、実際に発動された調整力の限界費用(不足時は上げ調整単価の最大値、余剰時は下げ調整単価の最低値)を適用するが、優先給電ルールが適用される状況においては、精算ルールが異なる。
具体的には、系統余剰かつ優先給電ルールにより電源IIIを抑制した場合、発動された電源III価格をタイムリーに把握することが困難であるため、「すべての調整電源の下げ調整単価の最低値」をインバランス精算単価としている。
また、系統余剰かつ再エネの出力抑制が行われている場合は、実質的に限界費用0円/kWhの再エネを抑制していると見なすことが適当であるため、インバランス精算単価は0円/kWhが適用される。
以上より、発電事業者が自ら経済差し替えを行うコストは0.01円/kWh、給電指令を受けたときのコストは0円/kWhであるため、現状でも、わずかであるが、何もせず給電指令を待つほうが得だということになる。
今後仮に、優先給電ルールによる抑制に対して発電事業者が対価を得られるように制度変更するならば、その対価を得ることを期待して意図的に高出力の発電計画を作成するなどの「ゲーミング」行動を誘発することが懸念される。これは、FIP電源の未約定(抑制)を悪化させると考えられる。
よって、GC以前の同時同量達成のための下げ調整に対する対価については、慎重な議論が求められる。
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