産総研がクリーンエネルギー技術に関する国際会議「RD20」を開催、研究機関の国際連携を加速へG20の研究機関が参加(2/2 ページ)

» 2023年09月08日 08時00分 公開
[廣町公則スマートジャパン]
前のページへ 1|2       

議論のポイントはどこに?

 1日目のリーダーズセッションでは、各機関のリーダーがRD20を通じた国際連携の具体的方策や活動全体について議論。2日目のテクニカルセッションでは、「脱炭素に向けた水素技術」「太陽光発電」「CO2有効利用」それぞれについて、掘り下げた発表と議論が行われる。産総研が掲げる議論のポイントは、次のとおり。

テクニカルセッション議論のポイント

  • 脱炭素化に向けた水素技術:水素LCAタスクフォース(サプライチェーン全体での水素利用の低炭素化効果を把握)やギガトン水素ワークショップ(水素の大幅普及に向けた技術的な重要課題に取り組む)が1〜4年間活動しており、その成果と今後の見通しが示される。
  • 太陽光発電:太陽光発電デバイスの性能評価に関わる標準化タスクフォースや、大規模太陽光発電設置の環境影響評価のタスクフォースが2022年に設置されているので、その中間的な進捗報告と、太陽光発電に関わる新しいトピックスが発表される。
  • CO2有効利用:バイオ由来CCUなど、最近のホットトピックスを各国の研究者から発表、ワークショップ、タスクフォースの設置など今後の展開が図られる。

 1日目と2日目に開催されるパネル展示では、カーボンニュートラルに関わる企業の製品・技術の説明や、研究者と企業との研究開発コラボ、地元自治体の環境への取り組みなどが紹介される。また、海外研究機関(独・フラウンホーファー研究機構、米・国立再生可能研究所など)によるグリーン水素に関わる研究成果や、産総研研究者によるペロブスカイト太陽電池・人工光合成・合成燃料・カーボンニュートラルシナリオなどの研究成果も展示される。地元の再生可能エネルギー関連施設や環境への取り組み、地場産業や特産物の紹介なども行われる。

 3日目のサイトビジットツアー(招待制)では、カーボンニュートラルに関わる福島県の研究所や企業、東日本大震災東日本大震災遺構などを見学する。産総研福島再生可能エネルギー研究所、デンソー福島(自動車用電装部品等の製造、先進的な環境・省エネルギー技術の取り組み)、福島水素エネルギー研究フィールド(FH2R)、震災遺構浪江町立請戸小学校、福島東日本大震災・原子力災害伝承館などを訪れる。

脱炭素に向けた技術連携に期待

 RD20の活動は、こうした国際会議を開催するだけではない。国際連携が急がれる技術分野に関しては、タスクフォースを立ち上げて集中的に取り組んでいる。具体的には次の3つだ。

太陽光エネルギー

  • 太陽光エネルギー利用について基礎寄りの技術領域に焦点を絞り、地球規模での連携を目指す
  • 太陽光発電デバイスの先進的評価技術の標準化に向けた取り組み

水素

  • 水素製造、貯蔵に加え化学製品や燃料への転換を含む技術領域をカバー
  • 共通課題として、リスク分析やライフサイクルアセスメント(LCA)を含む社会的受容性も対象

エネルギーマネジメント

  • 重要なのは信頼性と安定性の高いエネルギー供給。それを実現するためのイノベーションのカギとなるのは蓄エネ、スマートグリッドとデジタル技術を活用したシステム統合化技術
  • 標準化や系統接続のルールであるグリッドコードなどの規制は、地球規模の連携においても重要な要素

 また、2023年7月にはフランス・プラプテルにおいてサマースクールを開催するなど、若手研究者の育成にも努めている。このサマースクールには、5大陸16ヶ国から65人の若手およびシニア研究者(講師含む)が参加した。そして、その成果として、エネルギーシステムの脱炭素化に関するRD20リーダー会議への学生による提言「国際同窓会ネットワーク」が創設された。

 ワークショップも随時行っており、2023年10月には「第2回ギガトン水素ワークショップ」を産総研臨海副都心センター(東京都江東区)で開催する。水素製造技術の社会実装に向けた具体的な重要課題をFh-ISE、AIST、NREL の3機関が率直な議論を交わす場として、2019年に初開催されたものだ。今年のワークショップは、第5回RD20国際会議の直前に東京で開催し、RD20の活動として各機関が参加できるようにするとともに、議論の輪を広げることで国際連携の促進につなげていく考えだ。

 なお、これらの取り組みは、前回「第4回RD20国際会議2022」のリーダーズセッションで採択された「リーダーズレコメンデーション(推奨事項)」を具体化したものでもある。2023年10月4日から開催される「第5回RD20国際会議2023」では、さらに幅広い具体策が示されることとなる。

「第4回RD20国際会議2022」のリーダーズセッションで採択された「リーダーズレコメンデーション(推奨事項)」の概要 出典:RD20
前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.