CO2を資源化する「カーボンリサイクル」、日本での実施状況と今後の展望(1/5 ページ)

カーボンニュートラルの達成においては、CO2の再利用など「カーボンマネジメント」の活用が欠かせない。経産省の「資源・燃料分科会」第38回会合では、カーボンリサイクルロードマップやCCS(CO2の回収・貯留)事業展開など、幅広いカーボンマネジメントの現状が報告された。

» 2023年06月29日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

 2050年カーボンニュートラル目標の実現に向けては、電源の脱炭素化等を最大限進めつつも、CO2の排出が不可避な部門を対象としたネガティブエミッション技術の活用など、「カーボンマネジメント」の強化が必要とされている。

 このうち「カーボンリサイクル」は、CO2を有価物(資源)として捉え再利用する技術の総称であり、脱炭素化(環境政策)と産業政策、エネルギー政策を両立する、重要なオプションとして捉えられている。

図1.「カーボンマネジメント」のイメージ 出典:資源・燃料分科会

 なお合成燃料や合成メタン等のように、短期間でCO2が再び大気中に放出される製品については、移行期においては完全な脱炭素技術とはならないものの、将来的には、DACやバイオ技術でCO2を大気中から直接回収して再利用することにより、カーボンニュートラルを達成することを目指している。

 経済産業省の「資源・燃料分科会」第38回会合では、カーボンリサイクルロードマップやCCSの事業展開など、幅広いカーボンマネジメントの現状が報告された。

カーボンリサイクル拡大の絵姿・ロードマップ

 カーボンリサイクル技術では、CO2を有価物(資源)として捉え、これを分離・回収することが起点となるが、その後の代表的な工程・製品として、

  • 鉱物化によるコンクリート等
  • 人工光合成等による化学品
  • メタネーション等による燃料

へ再利用することにより、化石燃料を単純利用した場合と比較して、大気中へのCO2排出を抑制するものである。

 これら多くの製品・技術において、安価なCO2フリー水素が重要であることから、水素の調達環境や技術成熟度等を踏まえつつ、早期の普及・低コスト化を目指し、技術開発や実証を進めるロードマップが示された。

図2.カーボンリサイクルロードマップ 出典:資源・燃料分科会

 現時点の水素価格は100円/Nm3程度であるが、水素基本戦略において、2050年には20円/Nm3(プラント引き渡し価格)とすることを目標としている。

 カーボンリサイクル技術の評価には、LCAの視点が重要であるほか、国際的な規格化・標準化についても取り組むことが必要とされている。

 これらの取組による、2050年時点での最大CO2リサイクル量(国内利用されるカーボンリサイクル製品相当)は、「約2億〜1億トン」と試算されている。将来的に省エネや水素利用などが進展した場合、炭素の発生量自体が減少すると見込まれるため、「約2億〜1億トン」と逆向きに表している。この試算では、CO2の由来、発生地点(国内外)、炭素固定期間の長短は問わない、としている。

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