CO2を資源化する「カーボンリサイクル」、日本での実施状況と今後の展望(4/5 ページ)

» 2023年06月29日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

先進的CCS事業の選定

 国は、2050年のCO2年間貯留量として1.2〜2.4億トンを「目安」としているが、これを実現するには、横展開可能なCCSビジネスモデルを早期に確立する必要がある。

 このため、独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)は、2030年までの事業開始と事業の大規模化・圧倒的なコスト削減を目標とするCCS事業7案件を、モデル性のある「先進的CCS事業」として選定した。

図8.先進的CCS事業7件の一覧 出典:JOGMEC

 国による支援事業として、その効果を最大限高めるため、CO2の回収源、輸送方法、CO2貯留地域の組み合わせが異なるプロジェクトを支援することで、多様なCCS事業モデルの確立を目指している。

 7つの案件(うち2件は海外輸出)の2030年の年間貯留量見込の合計は約1,300万トンであり、目標値である600万〜1,200万トンの達成の蓋然性は高いものとなっている。

表2.CO2の回収源、年間貯留量等 出典:JOGMEC

 なおCCS事業では、パイプラインなどの輸送システムや、貯留に係る坑井について拡張を織り込むことにより、貯留規模の拡大と大幅なコストダウンが可能となる。

 今回選定した国内貯留事業(5件)の操業開始時の年間貯留量合計は約900万トンであるが、いずれも事業の拡張性が計画に盛り込まれており、拡張後の貯留量は約3,000万トンが見込まれる。この拡張により、CO2トン当たりの貯留コストは低減し、バリューチェーン全体で操業開始時に比べて3分の2程度までコストを抑えることができる案件もある。

図9.事業拡張によるコスト低減の例 出典:資源・燃料分科会

 なお、現行の想定よりも更なる拡張を織り込んだ場合、2050年までに20〜25件の同規模事業を国内で展開することにより、2050年の年間貯留量の約7割を国内でカバーできると試算されている。

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