CO2を資源化する「カーボンリサイクル」、日本での実施状況と今後の展望(2/5 ページ)

» 2023年06月29日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

カーボンリサイクル産業間連携の推進

 カーボンリサイクルの社会実装を進めるためには、CO2排出者と利用者を連携させる産業間連携、すなわちCO2・水素のサプライチェーン構築が必要となる。

 産業間連携は、CO2分離回収、輸送、利用のプロセスで構成されるが、例えばコンビナートなどの産業集積地では、既存インフラが整備されており、カーボンリサイクルに必要な水素供給も効率的に実施することが可能と期待される。

 産業間連携のあり方は地域ごとに多様であり、CO2の回収元、輸送手段、CO2の用途、CO2に求める品質などもさまざまである。

図3.CO2サプライチェーン 出典:資源・燃料分科会

 より多くの企業が参加した産業間連携を進めることにより、個別企業だけでなく地域全体でのCO2排出削減につながるとともに、安定的かつ効率的なCO2等の需給にも貢献すると考えられる。

 そこで、「CO2マネジメント事業者(仮称)」が、回収されたCO2の供給者と利用者のマッチングや、需給のバランス調整、CO2削減を最大化する全体マネジメント、CO2のトレーサビリティ等の役割を担うことが期待されている。

表1.「CO2マネジメント事業者(仮称)」に求められる役割 出典:資源・燃料分科会

カーボンリサイクルの環境価値

 カーボンリサイクルはまだ新しい技術分野であるため、事業者レベル・国家レベルいずれにおいても、その環境価値(CO2削減価値)の扱いは明確ではないものもある。国内では事業者レベルの公的制度として、温対法に基づく「算定・報告・公表制度(SHK制度)」があるが、今年度、SHK制度におけるCCUSの扱いを決める予定としている。

 なお、グローバルに活躍する企業において事実上の国際標準となっている「GHGプロトコル」では、カーボンリサイクル燃料(合成メタン等)は化石燃料と区別されていないため、合成メタン利用時に排出されるCO2量を、通常の都市ガスと同様にScope1(直接排出)で報告しなければならないと解釈される。このため、ガス業界等では、カーボンリサイクルによる排出抑制を評価出来る仕組み作りを求めているところである。

 また国レベルで見た場合、各国はIPCC のガイドラインに基づき、温室効果ガス(GHG)インベントリを作成しているが、カーボンリサイクルのCO2の取り扱いは明確化されていない。このため、日本のインベントリやNDC(国が決定する貢献)等における取り扱いについて整理・調整することが求められる。

図4.国レベルでのカーボンリサイクル環境価値の扱い 出典:資源・燃料分科会

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