世界の気候変動対策において、大きな役割を持つ国連気候変動枠組条約締約国会議(COP)。2023年11月末には最新の「COP28」が開催される。本稿ではこのCOP28を契機としたグローバルな気候変動への取り組みの現状と今後、そしてCOP28で想定される主要な論点ついて解説する。
国連気候変動枠組条約締約国会議(COP)は、1995年の開始以来、気候変動による社会や生態系への悪影響を緩和し、世界の持続可能な発展に貢献することを目指し、各国を結束させる上で重要な役割を果たしてきた。
2023年11月30日より、アラブ首長国連邦ドバイにて開幕する「COP28」では、「テクノロジーとイノベーション」「インクルージョン(包摂)」「最前線のコミュニティ」「ファイナンス」という横断的テーマが設定されている。本稿ではCOP28を契機としたグローバルな気候変動への取り組みの現状と今後、そしてCOP28で想定される主要な論点ついて整理したい。
まずは前回の「COP27」について振り返りたい。2022年にエジプトのシャルム・エル・シェイクで開催されたCOP27では、参加各国が自国における取り組み状況を共有し、国際公約の再確認を行うとともに、気候変動との戦いにおいて鍵となる新たなソリューションを導入するための道を切り開いた。
COP27で議論された重要なテーマは、以下の5つである。
2023年、国際社会は気候変動との厳しい戦いを強いられた。同年夏、北半球は観測史上最高気温を記録。この異常な暑さがさらなる異常気象を誘発し、前例のない山火事、洪水、干ばつを世界中で引き起こした。地中海沿岸地域では熱波の影響による大規模な山火事が発生し、ギリシャ、イタリア、アルジェリア、チュニジアなどの国々が被害を受けた。また、地球の反対側にあるハワイ・マウイ島は8月に大規模な山火事に見舞われ、100人近い人命が失われる痛ましい結果となった。
気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、このような異常気象や、それに伴う災害の頻発化・甚大化を、地球の気温上昇(すなわち炭素排出の具体的な影響)と関連付けている。国際エネルギー機関(IEA)は、エネルギー関連の世界のCO2排出量が2022年に過去最高水準の368億トンに達し、コロナ禍以前の水準を1%上回ったと発表した。
それに対する世界の取り組みはどうであろうか。国連環境計画(UNEP)の「排出ギャップ報告書2022」によれば、これまでの国際的な努力にもかかわらず、パリ協定で定めた2030年の気温目標を達成するために必要な排出削減量を達成できる見通しは全く立っていないと言う。また、COP26での合意により、世界各国による「国が決定する貢献(NDC)」が更新され、COP26時点の誓約に基づくGHG排出量予測よりも大幅に削減されると期待されていたが、2030年の世界の温室効果ガス排出量はCOP26時点と比べてわずか0.5ギガトン(GtCO2e)しか削減できないと予測されている。
パリ協定が定めるとおり、世界の平均気温上昇を産業革命以前と比べて2度以下に抑える道筋の範囲とするためには、2030年時点でGHG排出量を41ギガトンまで抑える必要がある。COP26およびCOP27の気温目標である同1.5度以下に抑える道筋の範囲とするためには33ギガトンまで抑える必要がある。しかし、「無条件(unconditional)」NDCに基づくシナリオでは2030年時点で55ギガトン、国内あるいは他国の資金・技術等のサポートを前提にした「条件付き(conditional)」NDCに基づくシナリオでも52ギガトンの排出が予測されている。
また、現在の政策が継続されれば、今世紀中に世界の気温は2.8度の上昇が予想されている。「条件付き」NDCが実施されれば同2.4度の上昇に低減されるものの、パリ協定目標を超えた数字であることには変わりない。このようにNDCは対策として全く不十分であるが、このNDCでさえも、各国は達成困難な状況にあるとされている。
目標達成に向けては、従前の取り組みに加え、さらなる再生可能エネルギーの導入、産業界全体における持続可能性の追求などが必要であり、草の根的な地域社会の取り組みから大規模な国際協力まで多面的なアプローチが求められる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.