11月30日から12月12日にかけてアラブ首長国連邦のドバイで開催されるCOP28では、世界が直面する気候変動の脅威について包括的に対策を検討するものとなる。本会議では、「テクノロジーとイノベーション」「インクルージョン(包摂)」「最前線のコミュニティ」「ファイナンス」という横断的テーマが設定されており、それぞれの主な論点は以下と考えられる。
また筆者は、COP28の成功には、以下がポイントとなると考えている。
「世界の平均気温上昇を産業革命以前と比べて2度より十分低く保ち、1.5度以内に抑える努力をする」というパリ協定での合意目標を実現可能にする、強化されたNDCが打ち出されることが必要である。
先進国が資金拠出の誓約を達成できなかったことを受け、気候変動対策のための資金拠出に対する公約の刷新・強化を図ることが必要である。各国が説明責任を明確に負う、確固としたメカニズムの実現が期待される。
政策立案者や公的資金だけでは望ましい成果を達成できていないのが現状である。民間セクターの力を有効に活用するため、民間資金がパリ協定の合意に沿った目標に向かっていくようインセンティブと義務化の両面から政策的に方向づけをすることが必要である。
ブレンデッド・ファイナンス、すなわち公的資金や慈善資金、民間投資を組み合わせることによって、特に資本集約的なプロジェクトにおいて、資金源を増やすとともに、民間投資家のリスクを軽減できる。持続可能な開発あるいは新興・途上国市場への資金流入を促すため、ブレンデッド・ファイナンス強化の道筋をつけることが必要である。
環境配慮の誇大広告や虚偽表示に対抗するため、厳格な基準と報告基準を設けることが必要である。
最後に、COP28において最も重要と考えるのが以下である。
国際会議、とりわけ環境や持続可能性に焦点をあてた会議では、GHG排出量削減、持続可能なプロジェクトへの資金拠出、社会的弱者の保護など、歴史的に多くの約束が国際的に交わされてきた。私たちが未来に踏み出すにあたり、COP28で約束を交わすことも重要だが、約束だけでは世界が理想的なものにはならないのが現実である。地球の運命を左右するのは具体的で直接的な行動だけであり、それを産むことこそがCOP28を成功と言うための条件である。
COP28では、気候変動の科学的な影響だけでなく、社会経済的な複雑さの影響についても議論される予定である。途上国は気候変動に対する脆弱性が際立っている一方、気候変動の原因を歴史的かつ相対的にほとんど作り出していないことから、気候変動対策が正義と公平性の原則と結びついたものでなければならないと痛感させられる。
革新的な資金調達スキームや、カーボン・クレジットの有効活用、技術移転の必要性は非常に高い。COP28は、政府間の対話にとどまらず、民間セクターによる変革を歓迎するものである。
持続可能な未来を実現するためには、COP28での合意が、世界中のエグゼクティブ、製造部門、企画部門、そして全ての家庭に響き渡る必要がある。国としての誓約、イノベーション、企業のコミットメント、そして一人ひとりの意志が全て重なることで、より良い世界の実現に近づくことができるはずだ。
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