2050年の電力需給バランスはどうなるのか? シナリオ別の試算結果が公表エネルギー管理(2/4 ページ)

» 2023年12月08日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

電力中央研究所による試算結果

 電力中央研究所の試算によれば、電力需要は2021年度924TWh(1TWh=10億kWh)から、2050年度には1,017TWhへの増加が想定される。これは自家消費を含む使用端電力需要(電力量)であり、検討会で最終的に比較する送電端電力量と比べると5%程度小さい数値であることに留意が必要である。

図3.2021年度から2050年度への電力需要増減要因(電中研) 出典:電力中央研究所

 左側の「基礎的需要」では、エネルギー消費原単位(電力需要原単位・燃料需要原単位)を一定として、原則、経済活動や社会動態の変動のみを考慮している。半導体や自動車など機械系産業の生産が伸びる将来像を想定し、産業部門や業務部門では電力需要が増加するものの、家庭部門においては世帯数の大幅減少を踏まえた減少を想定している。

 省エネ(エネルギー消費原単位の低下)については、過去10年間の削減トレンド(産業:▲1.0%、業務:▲1.8%、家庭:▲2.7%)を踏まえて、2050年に向けて産業:▲0.3%、業務:▲1.0%、家庭:▲1.0%の省エネを見込んでいる(いずれも年率)。

 2050年度の電化率は、産業部門が30%台、業務部門と家庭部門が60%台、運輸部門(鉄道、船舶、航空除く)が20%台への上昇を見込み、2050年度の電化需要は138TWhを想定している。

図4.2050年に向けての電化率・電化需要(電中研) 出典:電力中央研究所

 運輸部門の電化については、2021年現在の日本の乗用車新車販売台数386万台のうち、EVは4.4万台(BEV 2.1万台、PHEV 2.2万台)であるが、2050年の保有台数(ストック)はBEVが2,426万台、PHEVが610万台として、充電需要は37TWhを想定している。仮に、2050年度の乗用車ストック約5,300万台が全てEVに置き換わる場合には、充電需要は65TWhとなる(潜在的電化需要)。

 なお、IPCC第6次評価報告書の日本に関するシナリオにおいて、2050年の電化率は、産業部門が26〜66%(平均47%)、民生部門が56〜100%(平均81%)、運輸部門が4〜56%(平均32%)と大きな幅があり、電化率の見込み方次第で電化需要の大きさも大きく異なるものとなる。

 データセンターの電力需要については、不確実性が高いと考えられている。近年、データ利用量は急拡大しており、2021年度は前年度比33.8%の増加であるが、電力需要の伸びは3.5%に留まっている。電中研ではデータセンターのさらなる電力効率(PUE)の改善を織り込み、2050年には73TWh増加の93TWhの電力需要を想定している。

 水素製造については、電中研が作成した再エネ導入シナリオの1つである「受容性重視シナリオ」の再エネ発電量(650TWh)に対して、出力制御率を10%(65TWh)と仮定し、その電力が水素製造に利用されると想定している。これによる水素製造量は100万トン程度と想定される。

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