2050年の電力需給バランスはどうなるのか? シナリオ別の試算結果が公表エネルギー管理(3/4 ページ)

» 2023年12月08日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

地球環境産業技術研究機構(RITE)によるモデル分析結果

 地球環境産業技術研究機構(RITE)では、エネルギー・CO2対策評価モデル「DNE21+」を用いたモデル分析を行っている。DNE21+は動学的な最適化を行うモデルであるため、2100年までの将来の姿を踏まえた上での、2040年、2050年などの途中時点の評価がなされるという長所がある。

 今回の検討会では、需要の検討がテーマとされているが、DNE21+では需要を分析するためには同時に供給側を分析する必要があるため、需給双方のモデル分析結果が示されている。温暖化対策を想定しない「ベースライン」における化石燃料価格は外生的に想定し、排出削減を想定したケース(2℃目標、1.5℃目標)では、それに伴う化石燃料利用量の変化に従って、モデルで内生的に価格が決定される。

 RITEによる今回の分析シナリオは表1の13件である。BEV(バッテリー式EV)の標準ケースのバッテリーコストは2050年:1万円/kWh、低コストケースでは、2030年:1万円/kWh、2050年:5千円/kWh相当であるが、その他の各シナリオの具体的な内容については本稿では省略する。

表1.RITEによる分析シナリオ一覧 出典:RITE

 CO2排出削減に伴う素材産業の需要低減効果を含まない分析結果(経済モデルDEARSによるフィードバック無し)のうち、電源種別発電電力量は図5のとおりである。太陽光等の自家発・自家消費(非系統電力)もここに含まれる。

 モデル分析の結果、「再エネ100%」シナリオでは電力価格が高くなることから、電化シフトが進まず、発電電力量は抑制されるが、他のシナリオではいずれも2050年に向けて発電電力量は増加する(2050年 1,100〜1,600 TWh/年程度)。

図5.シナリオ別 発電電力量:電源種別 出典:RITE

 部門別分析のうち、産業部門の最終エネルギー消費量、電化率を見たものが図6である。

図6.産業部門の最終エネルギー消費量・電化率 出典:RITE

 部門別電力需要(使用端)が図7であり、再エネ100%ケースでは、先述したとおり、電力の限界費用が大幅に上昇するため、電力需要量が極端に抑制されている。2050年時点では、電力需要が大きいケース(広範なるイノベーション)では1370TWh/年、小さいケース(再エネ100%)では750TWh/年と、非常に大きな開きがあるが、多くのシナリオでは最終電力需要は2050年までに15〜20%程度増加することが見込まれる。

 また2040年時点では、「最良推定」シナリオにおいて気候変動対策(炭素価格)に伴う省電力効果が17%程度推定されている。他方、2050年になると電炉の増加により、電力需要の増加が見込まれ、省電力効果のかなりの部分を打ち消している。

図7.最終エネルギー消費量:部門別電力需要 出典:RITE

 カーボンニュートラル実現に向けては、電源の脱炭素化と電化が進むものの、水素系エネルギーやCCS等の将来の技術開発次第では、コスト効率的なエネルギー供給は変化し、その供給コスト変化によって、電力や非電力の最終エネルギー消費量も変化し得る。

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