2050年の電力需給バランスはどうなるのか? シナリオ別の試算結果が公表エネルギー管理(1/4 ページ)

電力広域的運営推進機関が、日本の中長期的な電力需給の分析を開始。11月に開催された検討会では、複数の企業・団体によるシナリオ別の試算結果が公表された。

» 2023年12月08日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

 電力の安定供給に必要となる供給力を確実に確保していくためには、電源建設リードタイムを踏まえた計画的な電源投資を進めていくことが必要である。

 現在、電力広域的運営推進機関(広域機関)が毎年取りまとめている「供給計画」では、この先10年間の電力需給見通しが示されているものの、事業者の投資予見性を高めるためには、10年を超える長期の電力需給の見通しがあることが望ましい。

 このため、資源エネルギー庁は2023年9月に「将来の電力需給に関する在り方勉強会」において、10年超先の電力需給のシナリオ策定に向けた方向性を取りまとめ、今後の具体的な検討は、広域機関にタスクアウトされたところである。

 広域機関では、2023年11月に「将来の電力需給シナリオに関する検討会」を設置し、詳細な検討を開始した。

10年超先の電力需給のあり得るシナリオの考え方

 広域機関の検討会では、建設リードタイムが10年を超える電源も存在することや、2050年カーボンニュートラル等も考慮する必要があることから、シナリオ検討の時間軸としては、2040年及び2050年を対象とする。また、将来的にはエリア別のシナリオを策定することを念頭に置きつつも、まずは全国のシナリオを策定することとする。

 検討会では、需要及び供給力のシナリオをそれぞれ一定の幅を持って想定した上で、その組み合わせによる2040年及び2050年の全国ベースの需給バランス(kW・kWh)及びCO2排出量を複数のシナリオとして示すことをアウトプットとする。

 その中では、需要に対して供給力が不足するケースや、2050年カーボンニュートラルが未達となるケースもシナリオとして提示する予定である。

図1.検討会アウトプットのイメージ 出典:将来の電力需給シナリオに関する検討会

 なお、今回策定したシナリオは5年ごと、または必要に応じて5年を待たずに見直しを行うこととする。

シナリオ検討の流れ

 検討会では、上記のような目指すべきアウトプットのイメージを関係者間で共有した上で、需要や供給力想定に基づく概算需給バランス策定を行いながら、整合的な検討を進めることとする。

 そこで検討会では、専門的な知見を有する会社・機関に、将来の不確実性を考慮した一定の幅(High/Mid/Low)を持った需要・供給力想定等の技術的な検討を依頼することとした。具体的には、電力中央研究所、地球環境産業技術研究機構(RITE)、デロイトトーマツコンサルティング、の3者である。

 検討会事務局では、3者による設定事項の妥当性を、海外事例等を参考に客観性を持って確認する予定としている。

図2.シナリオ検討の流れ 出典:将来の電力需給シナリオに関する検討会

検討会の第2回会合では、以下のように3者からの試算(モデル分析)結果が報告された。なお、今回の検討会で3者から報告された電力需要想定は、あくまで本格検討に入る前の段階での、各社の知見に基づく需要想定であることに留意願いたい。

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