主要な国内の再生可能エネルギー電源として導入拡大が期待されている洋上風力発電。なかでも水深の深い海域にも導入できる「浮体式」については、今後さらなる技術開発やコスト低減が求められている。こうした浮体式洋上風力発電に関する技術開発や、政府の投資政策の動向についてまとめた。
2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、太陽光発電に並ぶ主力電源の一つとして期待されるのが洋上風力発電であり、2030年時点のエネルギーミックスにおいて、陸上風力は17.9GW(1,790万kW)、340億kWh、洋上風力は5.7GW、170億kWhを占めている。
国は2020年に「洋上風力産業ビジョン(第一次)」を策定し、2030年までに10GW、2040年までに30〜45GWの洋上風力案件を形成する目標を掲げている。産業界では国内調達比率を2040年までに60%に上げ、着床式の発電コストを2030〜2035年までに、8〜9円/kWhに低減することにより、再エネの導入拡大と産業競争力強化の好循環を目指している。
足元ではこれまで再エネ海域利用法に基づき、10カ所の「促進区域」が創出されており、沿岸海域における着床式を中心に、年平均1GWのペースで合計4.6GWの案件形成が進んでいる。
洋上風力発電事業では、風車本体や基礎の製造だけでなく、O&Mなどを含めたサプライチェーン全体で3万点に上る関連部品等があり、事業規模は数千億円に至る場合もあり、関連産業への経済波及効果が大きく、地域経済の活性化にも寄与することが期待される。
欧州と異なり、遠浅の海域の少ない日本で「2040年までに30〜45GWの案件形成」という高い目標を達成するためには、水深50〜60m程度まで対応可能な「着床式」だけでなく、水深の深い海域でも導入が可能な「浮体式」についても、技術開発や量産化を通じて大幅にコスト低減することが必要とされる。
また国内市場だけでなく、急拡大が期待されるアジアの洋上風力需要を取り込むためには、サプライチェーン形成を進めつつ、次世代技術開発を戦略的に進めていくことが重要である。
しかしながら、現状の日本の競争力を踏まえると、限られたリソースを集中させた戦略的な研究開発の推進が不可欠であるため、官民協議会とNEDOでは、日本の自然条件や技術成熟度(TRL)等を踏まえ、開発すべき要素技術の絞り込みを行い、「洋上風力の産業競争力強化に向けた技術開発ロードマップ」として2021年4月にとりまとめた。
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