国内バイオマス発電の導入動向、「木質」は鈍化も「メタン発酵」が増加の見通し自然エネルギー

矢野経済研究所は2023年12月、国内のバイオマスエネルギー市場を調査に関する調査結果を公表した。

» 2023年12月26日 17時30分 公開
[スマートジャパン]

 矢野経済研究所は2023年12月、国内のバイオマスエネルギー市場を調査に関する調査結果を公表した。それによると、2030年度のバイオマス発電量は4万5988GWhになると予測している。

 今回の調査は未利用木材や一般木材、輸入材などを燃料とする木質バイオマス発電や、下水汚泥、食品廃棄物、家畜排せつ物などの有機廃棄物を原料とするメタン発酵バイオガス発電など、国内で導入が進むバイオマス発電事業全般の発電電力量を推計した。

 2022年度の国内バイオマス発電量は4万581GWhと推計。2021年度末から2022年度にかけて、設備容量が10MWを超える大規模な木質バイオマス発電所が複数稼働を開始したことで、2022年度は発電量が大幅に増加した。

 2023年度のバイオマス発電量は2022年度比107.4%の4万3583GWhの見込み。対象区分の認定時に入札制度が導入されるなどFIT制度の見直しにより、大規模な木質バイオマス発電所の新規建設の動きが鈍化していることに加えて、燃料の調達競争の激化により一部の発電所では稼働率が低下している。こうした背景から発電量の伸びは鈍化する見通し。

バイオマス発電市場の予測 出典:矢野経済研究所

 2024年度以降のバイオマス発電量は微増基調にて推移する見通し。今後、導入の増加が見込まれるものとして、調査では食品廃棄物を原料としたメタン発酵バイオガス発電を挙げている。

 従来、食品廃棄物のバイオガス発電では1日当たりの食品廃棄物処理量が50〜100tの大型のバイオガス化設備を中心に導入されてきた。しかし近年、より小規模であってもメタン発酵バイオガス発電を実施したいというニーズが高まっており、商業施設などで小型のバイオガス化設備の導入が検討されるケースが増えているという。こうした背景から、小型設備を中心に2030年にかけて導入件数を伸ばしていくと予測している。

 また、木質バイオマス発電については、複数の事業者がFIP制度の活用を検討している。FIPは発電事業者自身が売電タイミングや売電先を選ぶため、例えば電力の市場価格が高いときに売電することで収益を拡大できる。しかし発電事業者によっては、燃料価格の変動に応じた売電価格の設定や、再生可能エネルギーのニーズがある企業との直接取引を視野に入れた上で、FIT制度だけでなくFIP制度にも依存しないバイオマス発電事業を検討する動きが広がる可能性を指摘。これらの動きが広がると、2020年代中頃から2030年にかけて、FIT制度を活用しない木質バイオマス発電所の建設が進む可能性があるとしている。

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