当初は、既設の自家発(主に火力)の供給余力を活用する目的で開始された自己託送であるが、RE100などによる再エネ電力需要の増加に伴い、新規再エネ電源の導入を目的とした制度利用が増加している。
需要家が再エネ電力を調達する方法は多種多様であるが、従来、図3の④オフサイト型PPA(他社(グループ外)融通)は、「密接な関係」の要件を満たさないとして、自己託送の対象外であった。
エネ庁では、需要家主導による再エネ導入を促進する観点から、2021年11月に電気事業法施行規則や「自己託送に係る指針」を改正し、「密接な関係」の要件を一部緩和し、図3の類型④についても、自己託送を認めることとした。具体的には、以下の要件をすべて満たすものについては、「密接な関係性を有する」ことと新たに整理された。
再エネ電力に対する需要家ニーズが増加する中で、自己託送による電気の供給には再エネ賦課金が課されないことをことさらに強調し、自己託送の「導入支援」や、ある種の「代行」を行う事業者が増加している。
こうした自己託送を活用した事例の中には、自己託送の制度趣旨に反し、実態としては他者から電気を調達し他者に供給していると捉えられる案件が多いことが、「電力・ガス基本政策小委員会」で報告されている。
具体的には、「1.他者が開発・設置した発電設備をリース契約等で借り受け、需要家が名義上の管理責任者となることで自己託送の要件を満たした上で、実際の発電設備の維持管理に係る業務を外部に委託する事例」や「2.自己託送により送電した電気を自ら消費せずに需要場所内で密接な関係性のない他者に供給(融通)している事例」などが存在する。
エネ庁事務局では、制度趣旨に反すると考えられる、より具体的な事業イメージを幾つか例示している。
このためエネ庁では、制度趣旨に照らして自己託送の対象となる案件を明確にする観点から、「自己託送に係る指針」を改正し、発電側・需要側それぞれにおいて要件を厳格化することとした。
なお需要家は、従来通り、小売電気事業者を介したオフサイトPPA等により再エネ電力を調達することが可能であり、必ずしも自己託送を用いずとも同様の効果は得られると考えられる。経済産業省では、非FIT/FIPによる需要家主導型のオフサイトPPAへの補助金を設けており、これまで累計で32.6万kWの案件が採択されている。
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