「再エネ賦課金逃れ」防止へ自己託送要件を厳格化、新規受付は一時停止に法制度・規制(1/4 ページ)

太陽光発電などの自家発電設備の電力を、自社拠点内で融通する仕組みとして利用されている「自己託送制度」。政府ではこの制度の利用について、制度趣旨を逸脱した事業が多発していることから、要件を厳格化する方針を決めた。本稿では自己託送制度の仕組みから、厳格化される新たなルールの概要について解説する。

» 2024年01月05日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

 自己託送制度とは、複数の拠点を持つ事業者が、他の拠点の自家発電設備による電力量を自社内拠点間で融通することを目的として、電力自由化以前から行われていた仕組みである。

 その後、東日本大震災による電力需給の逼迫(ひっぱく)が発生して以降、自家発の余剰電力を有効活用することにより電力の安定供給を向上させるという観点から、一般送配電事業者による標準的な送電サービスと位置付けられた制度である。利用者は自営線を敷設することなく、既設の送配電設備を使用できるという大きなメリットがある。

図1.自己託送のイメージ 出典:電力・ガス基本政策小委員会

 現時点、自己託送は「自家発自家消費」の一類型と整理されているため、通常の(同一敷地内の)自家発自家消費と同様に、再エネ賦課金を徴収する対象となっていない。これは、現行の再エネ特措法では「小売電気事業者から電気の使用者に対して供給された電気」に対して賦課金を徴収することと規定しているためである。

 つまり需要家は、自己託送制度を用いることにより、小売電気事業者を介したオフサイトPPAよりも安価に、当該電源の電力を使用することが可能となっている。

 近年、「再エネ賦課金逃れ」と見られる事例が急増しており、その負担の公平性に問題が生じていることから、資源エネルギー庁では、自己託送の一部要件を厳格化する制度改正を行うこととした。

自己託送の基本的要件

 自己託送は、遠隔地に存在する自らの電源を利用することが基本的な考え方であるが、電源の所有形態は多様であるため、自社電源だけでなく、子会社等の「密接な関係」を持つ者の電源を活用することが出来る。

図2.自己託送のイメージ 出所:電力・ガス基本政策小委員会

 図2のように、需要家X社のBオフィスが必要とする電力のすべてをX社A工場からの自己託送のみで賄うことは通常は困難であるため、小売電気事業者から部分供給方式により電力供給を受けることが一般的である。

 自己託送は同一敷地内の自家発自家消費とは異なり、一般送配電事業者の送配電設備を利用することから、一般送配電事業者と発電量調整供給契約・接続供給契約を締結のうえ、計画値同時同量を満たす必要がある。計画値と実績値のズレ(インバランス)はインバランス料金の対象となる。

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