以上のように、今回の検討では、「設備(発電・受電)の所有」と「電気の最終消費者」に係る要件が厳格化されることとなった。新たな要件の適用対象は、新規の自己託送案件と、既存の自己託送における接続供給契約の変更(発電設備の増設等)に限られる。
図7の発電設備の系統連系手続きのうち、特高・高圧では接続検討申込み時点、低圧では契約申込み時点で、一般送配電事業者に対する検討料等の支払いが必要となる。このため、事業者の費用負担の状況等を考慮し、厳格化後の要件の適用は、この段階に達していない案件を対象とする。
また、駆け込み案件の増加による実務的な混乱を避けるため、上記系統連系手続きの期限は2023年12月末とする。念のため、この事務局案が示された「電力・ガス基本政策小委員会」第68回会合の開催日は2023年12月26日であり、実質的には即時適用であると言える。
実際にはそれでも「駆け込み」は発生しており、小委員会開催直前の数日間で、事前に情報を得た事業者から150カ所の自己託送の申請(同一の事業者)があったことが報告されている。
自己託送要件の厳格化を実施するためには、「自己託送に係る指針」を改正する必要があるが、この手続きには一定の時間を要する。
このため、改正後の指針が施行されるまでの間、現場の混乱を回避するため、2024年1月1日以降、自己託送を目的とした接続供給契約の新規申込みの受付を、一般送配電事業者では一時停止することとした。
そもそも、このような制度趣旨を逸脱した自己託送が行われる原因は、自家発自家消費には再エネ賦課金が課されないためだと考えられる。現在のように、小売電力の需要家のみが再エネ賦課金を負担するかたちが適切であるのか、エネルギー政策全体を俯瞰した検討が求められる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.