「再エネ賦課金逃れ」防止へ自己託送要件を厳格化、新規受付は一時停止に法制度・規制(3/4 ページ)

» 2024年01月05日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

設備の所有に係る要件の厳格化

 最近の事例では、他者が開発・設置した発電設備の貸与(リース)を受けた上で、需要家が当該設備の名義上の管理責任者となることにより、自己託送を利用する事例が確認されている。

 自己託送は、本来、需要家が保有する自家用発電設備による余剰電力の有効活用を目的とした仕組みであるため、他者が開発・設置した「発電設備」の譲渡又は貸与(所有権移転型リース契約を含む)等を受けて、名義上の管理責任者となるような場合については、自己託送の対象ではないことを明確化することとした。

 需要家となる者の子会社が発電設備を開発・設置する場合、譲渡元が完全子会社のケースに限り、親会社への発電設備譲渡が認められる。また、需要側における「受電設備」についても、他者が設置した受電設備の譲渡又は貸与等を受けて、名義上の管理責任者となるような場合は、自己託送の対象ではないことを明確化する。

発電設備の維持・管理に係る要件

 制度趣旨を踏まえれば、自己託送を利用する需要家は、自ら所有する発電設備について、自ら維持・運用することが前提となるが、実際には、発電設備の維持・運用等の全てを他の事業者に外部委託している事例もある。

 これを自己託送の対象ではないことを明確化する場合、具体的にどのような業務を自ら実施すべきと位置付けるか、その線引きについて精査が必要である。このため、当該要件の厳格化については、今後も検討を継続することとした。

自家発の「余剰電力」に係る要件

 当初の自己託送では、自家発電設備による「余剰電力」を有効活用することが目的であったため、発電した電気の「全量」を別の需要地に送電することは必ずしも想定されていない。他方、最近の事例では、設置した再エネ設備によって発電した電気の全量を、別の需要地に送電(自己託送)する場合が大半である。

 このため、余剰電力分を送電する案件のみを自己託送の対象とすることも一案ではあるものの、需要家主導で再エネ設備を導入するニーズが拡大していることなどを踏まえると、このような要件厳格化が適切であるか、電気事業制度全体を俯瞰した検討が必要とされる。

 また、「発電地点」の範囲や「発電地点における消費」の詳細な定義を行う必要があるため、当該要件の厳格化については、今後も検討を継続することとした。

電気の最終消費者に係る要件

 自己託送は、送電する電気の最終消費者は、自家用発電設備を保有する需要家自身であることが原則であり、その上で「密接な関係」要件の一部が緩和されている。

 ところが一部の事例では、需要場所における受電設備を保有していること等をもって自身の需要とみなし、需要場所内でテナント等の「他者」に電気を供給(融通)している。この場合、密接な関係性要件を満たしていない当該他者が実体的に電気の最終消費者となっている。

 なお、マンション一括受電のように、「一の需要場所」内で電気のやり取りを行うことそのものは、電気事業法において否定されるものではないが、自己託送の観点では制度趣旨に反するものと言える。

 このため、自己託送を用いて一の需要場所内で他者に電気を供給(融通)する場合には、当該他者の全てに、密接な関係性等の要件を求めることとする。

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