GX/脱炭素が評価されにくい産業を支援、新たに「CO2削減量」のアピールを可能に(1/3 ページ)

素材などの一部の産業では、脱炭素に必要な投資コストは高いが、製品そのものの機能や性状が変わらないため、環境価値が評価されにくいという課題が指摘されている。そこで政府では、企業が消費者に対してアピールしやすいよう、産業特性に沿った新たな評価指標の検討を進めている。

» 2024年02月06日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

 2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、企業による脱炭素投資(GX投資)の拡大が求められている。企業の脱炭素投資によって生み出された製品のGX価値(製品単位の実際のGHG排出削減量)は、サプライチェーン排出量(Scope3)の削減への寄与という形で、評価され始めつつある一方、現時点、最終消費者に対してはその価値の訴求方法が限定的である。

 特に素材産業(鉄鋼や化学)分野では、脱炭素に要する投資は大規模となるが、GX投資後の製品そのものの機能や性状は従来製品と変わらない場合、そのGX製品・GX価値は評価されにくいという課題がある。

 経済産業省の「産業競争力強化及び排出削減の実現に向けた需要創出に資するGX製品市場に関する研究会」では、産業分野ごとの違いを踏まえた、GX市場の創出に向けた検討を進めている。なお、研究会では製品・サービスを総称して「製品」呼んでいるため、本稿もこれに倣うこととする。

製品ライフサイクル全体でのCO2排出量削減

 従来、製品の脱炭素化とは主に、製品の使用時の省エネ性能・高効率化が取組の指標となっており、このような「省エネ」は、ユーザーのエネルギーコストの低減にも資するものである。

 他方、社会全体でのカーボンニュートラルの実現に向けては、使用段階だけでなく、原材料の製造や組立、最終的な廃棄等も含めた製品ライフサイクル全体での排出量の把握や削減が重要となる。このようなライフサイクル全体の製品のCO2排出量を評価する仕組み・指標の代表例が、「カーボンフットプリント(CFP)」である。

図1.「使用段階」と「ライフサイクル全体」のCO2排出量把握 出典:GX製品市場に関する研究会

 例えば自動車(ガソリン車)の場合、製品のライフサイクル段階別CO2排出量を見ると、7割程度が使用時(運転時)の排出であり、原材料製造はライフサイクル排出量全体の1割程度を占めると推計されている。

 自動車の原材料となる鉄鋼等、上流工程も含めた排出削減努力を促すためには、製品(自動車完成品)としての排出量だけでなく、各工程での「排出削減量」を評価することが求められている。

 サプライチェーン全体で見れば、ある事業者の自社内での「削減実績量」と自社外での「削減貢献量」は、サプライチェーンの上流・下流にいる他の事業者にとっては、削減実績量・削減貢献量のいずれにもなり得るものである。

 このため研究会では、サプライチェーン上の複数の段階にある事業者それぞれが、ライフサイクルCO2排出削減価値をアピールできるようにすることを検討している。これは、排出量という「結果」だけでなく、その削減に向けた「努力やプロセス」を評価する仕組みであると言える。

図2.原材料や製造工程における排出量の削減 出典:GX製品市場に関する研究会
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