長期脱炭素電源オークション、既設原発の安全対策投資も対象にエネルギー管理(3/4 ページ)

» 2024年02月16日 10時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

長期脱炭素電源オークションにおける水力発電の扱い

水力発電は、その規模や発電方式により、支援措置が異なる状態となっている。

 一般水力(自流式・貯水式)のうち、3万kW未満の規模では、新設・リプレースいずれもFIT/FIP制度の支援対象とされており、10万kW以上の新設・リプレース案件は長期脱炭素電源オークションの対象とされていることから、現時点、3万kW以上10万kW未満については空白が生じている。また揚水発電については、1万kW以上の新設・リプレース案件が、長期脱炭素電源オークションの対象とされている。

図3.水力発電に対する支援措置 出典:制度検討作業部会

 出力規模別に見た、一般水力の導入量や発電電力量は表3のとおりであり、導入済み(既開発)3万kW以上10万kW未満の一般水力は、全体の3割強を占めている。

 これらの一般水力を中長期にわたって維持、新設していくことは、電源の脱炭素化の観点から非常に重要であるため、今後、3万kW以上10万kW未満の一般水力については長期脱炭素電源オークションの対象(新設・リプレース)とすることとした。

表3.一般水力の導入量・発電電力量 出典:出力別包蔵水力から筆者作成

長期脱炭素電源オークションにおける水素・アンモニアの扱い

 脱炭素燃料の一つである水素・アンモニアの大規模な商用サプライチェーン構築のためには、調達(サプライチェーン支援)から大規模利用拠点(拠点整備支援)まで一貫した支援を行うことで、投資の予見可能性を高めることが必要とされている。

 よって、水素・アンモニア(以下、水素等)については長期脱炭素電源オークションだけでなく、現在検討中の「価格差に着目した支援制度(サプライチェーン支援制度)」や「拠点整備支援制度」と連携しながら、発電事業者の投資判断を促進することとしている。

図4.水素・アンモニアに対する複合的な支援措置 出典:制度検討作業部会

 水素等の製造は、国内と海外のいずれも想定されるが、国内製造の場合は上流側の固定費も長期脱炭素電源オークションの支援対象となっている。他方、海外製造の場合、「陸揚げ」より上流側のコストは、通常、燃料価格に反映されることを踏まえ、「価格差に着目した支援制度」でカバーする(つまり、長期脱炭素電源オークションの対象外)と整理していた。

 水素等を海外製造する場合の上流側の固定費としては、以下のような設備の建設費・維持費・事業報酬が想定される。

  • 水素(アンモニア)製造設備
  • 海上輸送船
  • CO2分離・回収・貯留設備(※ブルー水素)
  • 再エネの発電設備(※グリーン水素)

 このような上流側のコストのうち、固定費に当たる部分については、長期脱炭素電源オークションの支援対象として再整理するよう、検討が行われた。

表4.「価格差に着目した支援制度」と「長期脱炭素電源オークション」の比較 出典:制度検討作業部会

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