「同時市場」の論点、セルフスケジュール電源や相対契約に関する制度設計の方向性法制度・規制(3/4 ページ)

» 2024年03月26日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

同時市場における市場供出の考え方

 現行制度では、相対取引や市場取引において、原則、電源を特定しないkWhの取引が行われるのに対して、将来の同時市場では、電源単位でThree-Part Offer(起動費、最低出力費用、限界費用カーブ)による入札を行うことが想定されている。

 供給力(kWh)と調整力(ΔkW)の両方を同時最適化し、さらに個別事業者の最適化だけでなく、社会全体での最適化を追求する同時市場では、安定供給や相場操縦防止の観点から、より多くの電源が供出されることが期待される。

 このため、現行制度では平時において「予備力や入札制約(燃料制約等)を除いた供給力全量」の供出が求められているのに対して、同時市場では(予備力を控除せず)「入札制約(燃料制約等)を除いた供給力全量」を広義の電力市場(相対契約や同時市場)に供出することが望ましいと考えられている。ただし、予備力は、容量市場や供給能力確保義務の在り方にも関わるものであるため、電力システム改革の検証において検討を深める予定としている。

自己計画電源・市場計画電源の選択

 将来の同時市場導入において、原則全ての電源を市場計画電源として入札することを求めるか、自己計画電源として入札することも認めるかについて、検討が行われた。

 日本では、電源は発電事業者の財産であり、発電事業者が法令の範囲内で自由に使用し、収益を上げることが原則である。また、同時市場は短期的な最適化には優れた仕組みであるものの、調整力ΔkW供給するための中長期的な設備そのものの形成や、燃料を含めたkWh確保への有効性には不透明な点も残る。

 さらに、同時市場では電源の諸元(Three-Part)情報を登録するが、あらゆる制約情報等が登録できるわけではないため、発電事業者自身が電源を運用する場合と比べると、起動停止等の決定には一定の限界がある。

 これらの理由により、同時市場における電源の入札区分(自己計画電源/市場計画電源)については、原則、発電事業者が自由に選択できることとした。また、出力容量下限・出力容量上限についても、電源の各種制約等を踏まえ、発電事業者が主体的に設定することを認める。

 ただし、相場操縦や売り惜しみ等の防止の観点から、出力容量上限を不当に低く設定していないか等の適切な取引規律や厳格な監視が必要とされる。なお、需給逼迫時には、自己計画電源であっても、一般送配電事業者により緊急的な電源運用を行うことも想定される。

図4.発電事業者が主体的に選択・設定可能な仕組み 出典:同時市場の在り方等に関する検討会

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