国内で一定量以上の温室効果ガス(GHG)を排出する事業者は、「温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度」(SHK制度)に基づき、排出量の算定と国への報告が義務付けられている。現行のSHK制度において、CCS等により自らが排出するGHGを回収し長期固定する場合、その回収分は報告すべき排出量に計上する必要はないが、合成メタンや合成燃料を燃料として使用する場合、その利用者がCO2排出量を計上するルールとなっている。
このカウントルールのままでは、合成メタン等のカーボンリサイクル(CR)製品の利用が広がらないため、国はCO2の原排出者(回収者)とCR製品の利用者の双方にインセンティブを与える仕組みを検討中である。
現時点、環境省と経済産業省が共同開催するSHK制度算定方法検討会では、CO2原排出者と利用者の双方が一旦排出を計上したうえで、CO2回収価値が証書等のかたちで原排出者や利用者に移転していく(排出量をキャンセルアウトできる)カウントルール案が提示されている。
環境省では、回収したCO2が利用され削減価値が生じたことの証明方法等、ルールの詳細について年度内に取りまとめを行い、2025年度報告(2024年度実績)からの適用を目指している。
また日本は、海外で製造された合成メタン等のカーボンリサイクル(CR)燃料を輸入して利用することが想定されるが、CR燃料の利用については、現時点、国際的なCO2カウントルールが整備されていないことが課題とされている。
国単位の排出量カウントに関して、各国は二重計上を回避することが原則であるため、合成メタンの輸入・利用により日本国での排出削減を報告するということは、合成メタン製造国(例えば米国)側で、排出増加(オンセット)をカウントすると考えられる。
合成メタンを海外で製造・輸入する民間事業者(日本企業と米国企業)の間では、CO2の二重計上を回避するため、すでに基本合意書を締結している事例もあると報告されており、環境省では、このような民間事業者間での整理を踏まえたカウントを行い、日本での排出削減として主張していくことを表明している。民間事業者による投資意思決定を阻害せぬよう、国際的なカウントルールの整備が急がれる。
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