2024年5月に成立した「水素社会推進法」では、低炭素水素等の供給・利用を早期に促進するため、計画認定を受けた事業者に対し、価格差に着目した支援措置等を講じる、としている。
まず「水素等」とは、水素及びその化合物(アンモニア、合成メタン、合成燃料)を指し、さらに「低炭素水素等」とは、「1.その製造に伴って排出されるCO2の量が一定の値以下」「2.CO2の排出量の算定に関する国際的な決定に照らしてその利用が我が国の削減に寄与する」等の要件に該当するものと定義されている。
水素そのものは燃焼時にCO2を排出しないが、その製造段階等におけるCO2排出量に着目した「炭素集約度」を基準とすることとしており、当面、1kgの水素製造におけるCO2排出量が、3.4kg-CO2e以下のものを低炭素水素と設定した。CO2排出量の算定範囲は、国際的な基準と同様に、“Well to Production Gate”(原料生産から水素製造装置の出口まで)である。
この基準値は固定的なものではなく、今後の技術開発や海外の動向等を踏まえて、5年以内に見直しを検討することとしている。
民間団体のCCR研究会では、ISO 14067(温室効果ガス−製品のカーボンフットプリント−定量化のための要求事項及び指針)に基づき、合成メタン(e-methane)の炭素集約度を試算した。算定範囲は、” Well to Consumer”(原料調達から消費まで)のサプライチェーン全体であり、我が国の地理的条件を考慮し、液化して船舶で輸送することを前提としている。
なお日本ガス協会の提案により、ISO 6338-1(LNGチェーン全体のGHG排出量の計算)において、合成メタンの原料CO2と燃焼時GHG排出量を相殺する(原料CO2をマイナスカウントする)算定式が、同規格の附属書Cへ収録された。
水素製造工程については、上記の低炭素水素基準値3.4kg-CO2/kg-H2(=28.2g-CO2/MJ LHV)をそのまま使用し、他の工程については2030年時点に想定される技術を用いて合成メタンの炭素集約度を試算した結果、49.3g-CO2/MJ LHVとなった。
試算において、水素は米国からの輸送を想定し、CO2は産業界(高炉、セメントなど)から排出されるCO2を化学吸収法で回収、サバティエ反応によるメタネーション、などを試算の前提条件としている。
2030年時点で想定される合成メタンの炭素集約度を、化石燃料と比較したものが図6である。今後、グリーン水素の利用や革新的メタネーション技術の利用、系統電力CO2排出係数の低下などにより、合成メタンの炭素集約度はさらに低下するものと予想される。
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