ガスの脱炭素化で期待の「合成メタン」、その基準案とメタネーション技術の開発動向第12回「メタネーション推進官民協議会」(1/3 ページ)

ガス分野の脱炭素化技術として普及が期待されているメタネーション。1年ぶりに開催された「メタネーション推進官民協議会」では、今後普及が期待されている低炭素e-methane(合成メタン)の基準案や、最新の技術開発の動向などが報告された。

» 2024年06月04日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

 民生、産業部門のエネルギー消費量の約6割は熱として利用されており、2050年カーボンニュートラル達成に向けては、熱需要の脱炭素化を実現することが重要である。

 水素は、電化が難しい熱利用の脱炭素化や電源のゼロエミッション化に向けた重要な技術であり、2023年6月に改定された「水素基本戦略」では、水素やアンモニアだけでなく、水素と炭素を原料とする合成メタン(e-methane)や合成燃料等も基本戦略の対象とされている。また第6次エネルギー基本計画では、2030年に既存インフラへ合成メタンを1%注入することを目標としているほか、グリーン成長戦略では、2050年までに既存インフラに合成メタンを90%注入することを目指している。

図1.民生、産業部門の用途別エネルギー消費量 出典:日本ガス協会

 合成メタンの普及拡大に向けた技術的・経済的・制度的課題やその解決策等を官民で共有するため、「メタネーション推進官民協議会」が設置されており、約1年ぶりに開催されたその第12回会合では、最近の技術開発の動向や、低炭素e-methane(合成メタン)の基準案などが報告された。

メタネーション技術開発の方向性

 現時点、合成メタンを製造するためのメタネーション技術には、水素とCO2を原料とした「サバティエ反応」が用いられており、すでに小規模な設備(12.5Nm3/h)は実用化されている。東邦ガスと知多市による実証事業では、製造された合成メタンを日本で初めて都市ガス導管へ注入し、一般需要家への供給が行われている。

 サバティエ方式は大規模化に向けて、400〜500Nm3/h規模の実証試験を予定しており、2030年代に数万Nm3/hの大量生産技術の実現を目指している。

図2.メタネーション技術開発ロードマップ 出典:メタネーション推進官民協議会

 またグリーンイノベーション基金のもと、水素ではなく「水」を原料として、より高効率に合成メタンを製造することが可能な「革新的メタネーション技術」の開発が複数進められており、2040年代の実用化を目指している。

表1.革新的メタネーション技術と従来技術の比較 出典:メタネーション推進官民協議会
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