需給調整市場の「市場外取引」は一時中断、三次調整力②に新たな調達手法を導入へ第48回「需給調整市場検討小委員会」/第94回「制度検討作業部会」(4/4 ページ)

» 2024年07月03日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]
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「余力活用」の現状

 「余力活用」は、容量市場に基づく余力活用契約のもと、ゲートクローズ(GC)前の発電事業者などの計画策定に支障を与えないことを前提に、GC後の余力を一般送配電事業者(TSO)が活用できる仕組みである(上記図5参照)。

 TSOは、GC以降の調整力kWh市場において、「需給調整市場で確保した電源」、「市場外調達で確保した電源」、「余力活用電源」の中から、kWh価格の安い順に稼働指令を発している。ただし、もしTSOが自由に余力活用電源に稼働を指令できるとすれば、そもそも需給調整市場が形骸化してしまうため、平常時においてTSOは余力活用電源の起動停止権を持たず、あくまで緊急時のセーフティーネットとして活用が可能である。

 また、余力活用の名前のとおり、事前に調整力を確保することは出来ないことや、価格の透明性に劣ること、広域調達が出来ないことにも留意が必要である。

 なお需給調整市場では不等時性を考慮した複合約定ロジックが適用されているが、余力活用では、複合約定の考え方を一部反映した「略式複合約定」により、コスト低減を図っている。「略式複合約定」を行う余力活用電源の調達コスト(電源の持替費用)を需給調整市場の週間取引(複合商品の平均単価)や前日取引平均単価と比較したものが図6である。

図6.電源の持替費用の比較(2024年4月) 出典:需給調整市場検討小委員会

 前日取引では、極端な高単価約定が平均単価を引き上げているエリアもあり、単純な比較が困難な面もあるが、週間取引や前日取引と余力活用のいずれが安価であるかは、エリアにより異なる状況である。これは、余力活用ではあくまで簡易的な複合約定であるため、完全に最適な組合せとはなっていないことや、特定の電源において持ち上げ/持ち下げ電源のスプレッドが大きいことなどが理由と推測されている。

「市場外調達」の一時的中断

 以上より、「市場外調達」はTSO及び調整力提供者の大きな業務負担となっているにも関わらず、調達量はわずかであり、その未達分は余力活用によって賄われている。

 また略式複合約定の導入により、余力活用による調達コストは、需給調整市場における調達コストに近い水準となっており、余力活用が必ずしも高コストとなるわけではないことが確認された。

 これらを踏まえ、市場外調達については、需給調整市場における恒常的な応札不足が解消されるまで、各一般送配電事業者の判断において一時的に中断することを選択できることとする。

 なお現在の週間商品は、2026年度以降、前日取引化されることに伴い、市場外調達という仕組み自体が原則不要となる。現在は、調整力調達費用の急増に対する「止血策」を最優先せざるを得ない状況であるが、需給調整市場への応札量の増加を促す方策についても検討が急がれる。

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