定置用蓄電システムの主な収益源としては、卸電力市場(kWh)での裁定取引(アービトラージ)、容量市場での供給力(kW)提供、需給調整市場での調整力(ΔkW)の供出が考えられる。
表1のパターン1・2は系統用蓄電システムのユースケースであり、このうち、容量市場と卸電力市場で活用するパターン1を試算対象とする。パターン3はFIP電源に蓄電システムを併設するユースケースであり、タイムシフトによるプレミアムの獲得とkWh収入の確保(≠0.01円/kWh)を想定する。
なお以下の試算では、前提条件をすべて稼働年数20年、容量市場での収入として9,555円/kW(20年間一律)を見込んでいる。これは、2023年度容量市場メインオークション(対象実需給年度:2027年度)における東京エリアのエリアプライスであり、調整係数は100%と想定している。実際には2023年度メインオークションであっても、エリアプライスは北海道の13,287円/kWから北陸/関西/中国/四国の7,638円/kWと、ばらつきが大きいことに留意願いたい。
蓄電システムの裁定取引(アービトラージ運用)とは、市場価格が安い時間帯に充電し、高い時間帯に放電(売電)することが基本となる。よって、裁定取引による収益の大きさは充放電時「値差」の大きさによって決まる。
太陽光発電の導入拡大により、全国的に卸電力市場(JEPX)におけるスポット市場価格が0.01円/kWhとなるコマが増加しており、2023年度には九州エリアでは年間2,178コマ(年間の12.4%)、西日本エリアでは約1,200コマが0.01円/kWhとなった。
他方、特に2022年度は世界的な燃料価格の上昇により、JEPXスポット価格も高騰した。これにより、スポット価格の24時間(48コマ)平均値が上昇しただけではなく、1日48コマのうち上位6コマの価格が大きく上昇したことにより、下位6コマとの「値差」が拡大した。2019年度までは市場のボラティリティが小さく、上位と下位6コマの値差が4.45円であったのに対して、2022年度の値差は17.54円へ拡大した。
図4の5年間(2019〜2023年度)における値差の平均値10.61円/kWhをベースシナリオとして(20年間続くと仮定)、系統用蓄電システムのアービトラージ運用における収益性を試算したものが表2である。(過去5年間で、値差が最も小さい2019年度をダウンサイド、最も大きい2022年度をアップサイド)
ベースシナリオの場合、建設費(CAPEX=蓄電システムコスト+工事費+受変電設備等+税等)が5万円/kWh以下であれば、一定の収益性(IRR)が見込まれる試算結果となった。
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