今後VRE比率がさらに高まることにより、VRE発電予測誤差の拡大に伴う調整力ΔkWの必要量が増加するとともに、調整力となる火力等の電源(設備量)が減少することが想定される。
広域機関によれば(図3)、2030年代前半時点では、全てのエリアにおいて調整力必要量に対する調整力設備量そのものは充足する見込みであることが確認されている。ただし、調整力設備量全体では充足するとしても、系統混雑やフリンジ(瞬時的な潮流変動)量の増加に伴い、調整力を発動できないことも考えられる。よって、広域機関では今後のフリンジの取り扱いについて、検討を進めているところである。
従来は大規模電源から需要地に対して一方向に電力が供給されていたが、需要地近辺に大量の再エネ電源が導入されることにより、電力の潮流に大きな変化が生じている。
近年では、無効電力の供給量が消費量を上回ることや、電圧調整可能な発電機の並列台数が減少することにより、平常時の電圧上昇が常態化しており、この電圧を適正範囲に調整するために分路リアクトルが投入されている。すでに一部エリアでは軽負荷期において、分路リアクトルの投入だけでは十分な電圧調整が出来ないため、これに加えて、送電線停止の対策が行われている。
ただし、このように送電線を停止する場合、同期発電機と需要間の電気的距離(インピーダンス)が増加するため、同期安定性が低下することにより、運用容量も低下することとなる。また、インピーダンス変化量の増大は、電圧安定性への影響も懸念される。
ただしこれは、図4の右図のような軽負荷時、つまり基幹系統を流れる潮流が少ない断面で発生する事象であるため、運用容量を下げたとしても系統混雑は生じないと考えられる。よって、中期的時間軸の範囲では悪影響は生じないと考えられるため、長期的な課題として認識しつつ、当面の対策は不要と判断された。
また、非同期電源であるVREが大量に連系される場合、同期連系系統の同期化力が低下し、送電線故障時などにおける同期電源の振動(加速/減速)が大きくなり、同期発電機が脱調しやすくなるという問題が生じる。
2030年度時点のSNSP(瞬間的な非同期電源比率)は、北海道エリアで約52%、東エリア(東北・東京)で約44%、中西エリア(中部・北陸・関西・中国・四国・九州)で約46%と推計されており、影響が顕在化する領域までの余裕が少なくなっている。
このため、中長期的には従来の運用では対応できず、系統の運用容量を下げざるを得ないことも考えられるため、同期安定性の低下を補う方策について今後検討を行う予定としている。
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