短絡容量はその地点における電圧とその地点から電力系統を見た時のインピーダンスによって定義され、一般的に同期電源が少なくなるとインピーダンスは大きくなることから、短絡容量が小さくなる。
短絡容量の大きさは電圧維持能力の程度も表しており、短絡容量が小さいほど、系統事故などの擾乱が発生したときの電圧変動が大きくなる。そのため、同期電源が減少していくと、電圧変動が大きくなり易くなると考えられる。
また、非同期(インバータ)電源は近傍の電圧波形を基に周波数を演算するため、系統事故時の電圧の乱れを周波数の変動として誤って検出してしまうことがある。周波数変化を誤検出したインバーター電源は運転停止し、これが更なる周波数低下と電源の連鎖脱落を招くと懸念される。
広域機関による試算では、2030年時点においてインバーター電源の停止は事故点周辺の一部範囲に限られるものの、2030年頃以降、次第にその影響範囲は拡大していくと考えられている。
なお、中西エリアにおいては現行の運用容量の算定において、想定される発電機解列量を周波数維持限度値から差し引いているため、将来的に妥当な発電機解列量を整理する必要があると考えられている。
また、短絡容量の低下による電圧変動の増加は、故障点近傍のインバーター電源の解列を促すことにより、電圧安定性への悪影響を招くと考えられる。
現行の負荷(需要側設備)の周波数特性は、1948年にイギリスで実施された負荷特性把握試験結果を参考としている。その当時と異なり、現代ではエアコンやEV、蓄電池など多数のインバーター設備が使用されているため、負荷周波数特性も変化していると考えられる。これは電源のインバーター化と同じく、系統故障時の周波数低下をより厳しくする要因となると考えられる。
また、インバーター需要の増加は、定電力特性(需要電力量は系統電圧に依らず、常に一定である特性)の割合が増加していくこととなり、電圧特性に対する影響も大きくなると考えられる。
このような負荷側の状況変化は、系統故障直後の電圧低下を悪化させ、電力用コンデンサの投入等によっても適正電圧への回復が難しくなり、電圧不安定現象に至る可能性が高まると懸念される。
このため現在、負荷の周波数特性や電圧特性に関する実態調査が進められており、広域機関では今後の評価方法の見直しについて検討を行う予定としている。
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