電力系統の品質を維持するため、隣接エリアの周波数が低下した場合に、電力を瞬時に送電する「EPPS(緊急融通制御)機能」。しかし近年、周波数品質の悪化によりその機能が動作確実性が不安視されている。そこで電力広域機関の作業部会では、EPPS機能の新たな運用方法などについて検討を開始した。
地域間連系線や地内送電線の「運用容量」は、「熱容量」「同期安定性」「電圧安定性」「周波数維持」の4つの制約要因を考慮して設定されている(※「再エネ大量導入の時代、地域間連系線・地内送電線の運用容量はどうなるのか?」を参照)。
2024年度時点における全国の地域間連系線の運用容量制約は図1の通りであり、東エリア(50Hz)と中西エリア(60Hz)間の連系設備としては、周波数変換所(FC)が用いられている。
FCには、片方のエリアの周波数低下を検知し、予め設定した電力を瞬時に送電する「EPPS(緊急融通制御)」機能を具備しており、周波数維持制約の検討においても考慮されている。
ところが、近年では周波数品質(±0.1Hz滞在率)が悪化傾向にあるため、EPPSが確実に動作するとは言えない状態となっている。このため、広域機関の「将来の運用容量等の在り方に関する作業会」では、EPPSの動作確実性を上げる整定変更等について検討を行った。後段では、負荷制限の織り込みによる運用容量(周波数維持制約)の拡大についても報告する。
FCのEPPS(Emergency Power Presetting Switch)機能は、50Hz、60Hzエリアそれぞれの突発的な事故等による周波数の異常低下に対応し、瞬時に電力融通を行い、故障側系統の周波数を効率的に回復させることを目的としている。
現在、新信濃FC・佐久間FC・東清水FCでは、EPPS動作量として固定値60万kWを設定している(固定EPPS)のに対して、飛騨信濃FCでは、故障側エリアと健全側エリアの周波数偏差が逆転しない量を連系線空容量の範囲内で融通する方式(可変EPPS)としている。なお固定EPPSでは、その動作時には確実に電力を融通できるよう、あらかじめ60万kWのマージンが常時確保されている。
これまでは、EPPSは確実な動作が十分期待できるものとして、運用容量の周波数低下維持限度値の算出においては、EPPSの動作量全量が織り込まれている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
人気記事トップ10