EPPSの基本的な目的は、故障側エリア(受電側)の周波数を回復させることであるが、電力を送電する健全側エリアの周波数が著しく低下することは当然に避けるべきであり、受電(故障)側エリアと送電(健全)側エリアの周波数偏差が逆転状態とならないことが原則とされている。
このため、FCのEPPS動作条件としては、故障側(受電)側では「−0.4Hz以下」であると同時に、健全側(送電)側では「−0.1Hz以上」が周波数低下量として定められている。
固定EPPS動作量は、健全側と故障側で周波数偏差が逆転しないという考えに従い、60万kWを設定している。
なお2027年度末には、佐久間・東清水地点に新たなFCを合計90万kW増設することにより、FCの合計容量は現在の210万kWから300万kWに拡大する予定である。これにより、FC全体での空容量の増加が期待できるため、レジリエンス向上の観点から、健全側エリアの周波数低下が故障側エリアの周波数低下を上回る(逆転する)ことを許容した上で、故障側エリアの周波数を回復させる新EPPS機能の実装が予定されている。
ところが近年、中西エリア(中部・北陸・関西・中国・四国・九州)では、変動性再エネ電源の増加や火力等の調整電源源の減少に伴い、周波数品質、具体的には標準周波数60Hz±0.1Hz以内滞在率の悪化傾向が生じている。(※「中部・西日本で電力の周波数品質が低下、その要因分析と今後の対策」を参照)
先述の通り、健全側(送電側)のEPPS動作条件は−0.1Hz以上と設定されているため、中西エリアで周波数が0.1Hz以上低下しているタイミングでは、EPPSは動作しないこととなる。結果として、本来EPPSが動作していれば抑制できていたはずの負荷遮断(停電)が、東エリアで起こる可能性もあるため、EPPSの動作確実性を向上させることが求められている。
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