短期的・中長期的いずれの時間軸においても、企業に対して脱炭素化に向けた取組/投資を促すためには、炭素価格(排出枠価格)の予見性を高めることが重要となる。
ETSにおいて、排出枠は、相対取引・取引所取引のいずれも可能とする。しかし当面の間は、透明性のある公正な価格形成を促す観点から、取引所集中義務を課すなど、取引注文が取引所に集中するような措置を講じることとする。
また、取引に厚みを持たせ流動性を高める観点から、排出枠の取引は、制度対象者に限定せず、一定の要件を満たす事業者(金融機関等)の参加を認めることとする。多様な参加者が取引に参加することにより、取引が極端に一方向に傾くことを防ぎ、価格安定性が増す効果が期待される。
ただし、先述のとおり第2フェーズでは参加事業者各社に排出枠全量を無償で割り当てるため、社外から排出枠を購入するニーズはそれほど高くないと予想される。
排出枠の取引価格には上限・下限を設定したうえで、その価格帯をあらかじめ示すことにより、取引価格の予見可能性を高め、企業の脱炭素化投資を促進していく。
排出枠が不足した場合は、あらかじめ定めた価格(上限価格)を支払うことによる義務履行を可能として、ETS義務順守コストの高騰を回避する。また市場価格が下限を下回る場合、排出枠の「リバースオークション」を実施することで需給バランスを機動的に調整する。具体的には、GX推進機構が市場から余剰排出枠を買い上げる案が示されている。
なお、ETS第2フェーズ以降は、排出枠のバンキング(繰越し)を許容する案が示されており、将来の割当基準を強化することにより、当期フェーズの価格を下支えすることも考えられる。
排出枠の償却を行わなかった企業に対しては、ペナルティとして(償却義務は残したまま)その不足分に応じた金銭の支払いを求めることとする。
12月頃開催予定の次回会合では、J-クレジット等の取り扱いを含め、ETS第2フェーズの制度案取りまとめを行う予定としている。2026年度の本格開始に向けては、制度の詳細設計が急がれる。
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