系統用蓄電システムの需給調整市場における収益は、応札価格・応札ブロック数・落札率の大小によって決定される。よって、需給調整市場による想定収益は、「需給調整市場応札価格×1ブロックの時間×応札ブロック数×落札率」という計算式によって簡易的に試算できる。
本試算では収益性の感度分析を行うために、需給調整市場応札価格は「5円・10円・15円/ΔkW・h」の3つのケースを試算した。1ブロックの時間は現行制度の3時間とした。
また、1日あたりの応札ブロック数は、事業者へのヒアリングに基づき、「1ブロック・2ブロック・その平均の1.5ブロック(現実には整数単位)」として収益性を感度分析した。
足元では落札率はほぼ100%であるが、今後の需給調整市場の制度見直し等により落札率が低下することが想定されるため、本試算では落札率を60%と仮定した。
図3の例の場合、1日あたりの獲得収益は、5.0[円/ΔkW・h]×3[h/ブロック]×2[ブロック/日]×60%=18[円/ΔkW・日]と試算される。その他の主な試算条件は、表3のとおりである。
以上の前提条件を基に、系統用蓄電システムの需給調整市場における収益性評価を試算した結果が表4である。当然ながら、応札価格(=落札価格)が高いほど、建設費(CAPEX)が低いほど、良い収益性が期待できる。また、応札ブロック数を増やすと収益性は増加するが、商品区分によってはアセスメントIIについて不適合となるリスクがあることに留意が必要である。
火力等の現在の応札価格水準である5.0円/ΔkW・hで20年間運用した場合、プラスの収益性を得るためには、蓄電池導入に関わる建設費(CAPEX)を、1ブロック/日の応札では3万円/kWh、2ブロック/日の応札では5万円/kWh以下に抑える必要があることが分かる。
2023年度「系統用蓄電池等導入支援事業」等の採択案件の系統用蓄電システムのコスト(税等を除く)は6.2万円/kWhであり、海外製蓄電システムを採用する場合、コスト2〜4万円/kWhの案件も報告されており、条件次第では一定の収益性が期待される。
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