鉄道事業者は、駅舎や車両基地、車両工場といった建物のほか、線路用敷地などを多く保有している。これらの鉄道アセットを活用した再エネ発電電力量は、2022年度時点で約5,000万kWhと報告されている。
「鉄道脱炭素官民連携プラットフォーム」の「再エネ導入・活用促進WG」では、これまで都市型や郊外型などの地産地消型モデルにおける太陽光発電や蓄電池の設置について検討を行い、「鉄道アセットを活用した太陽光発電の導入に関する手引き」を作成してきた。
また同WGでは、耐荷重の小さいホーム上屋や高架橋側面などの未利用領域を対象として、ペロブスカイト等の軽量な次世代型太陽電池の導入ポテンシャルについて検討を行った。
鉄道駅の仮想モデルは表1の5ケースであり、太陽光の設置場所は駅舎(屋上、南・西・東の側壁3面の計4面)、ホーム上屋と仮定している。
5つの仮想モデルにおける太陽光発電パネル設置可能面積や発電容量等の推計結果は表2のとおりである。発電電力量はシリコン系パネルと同等と仮定しており、方位角ごとの日射量を考慮して算定している。
再エネ導入・活用促進WGでは今後、駅舎以外にも、高架橋側面などの未利用領域を対象とした全国規模での発電ポテンシャル推計や、設置コスト等を含む、より詳細な検討が必要としている。また、仮に全国の線路沿線に平均1m幅のペロブスカイト太陽電池を設置するならば、設置面積は2,800haとなり、年間発電電力量は20億kWhに上るとの試算もある。
都市部の鉄道では、朝夕の通勤/通学時間帯での電力需要が大きく、昼間に発電量が多い太陽光発電とはミスマッチがあるため、蓄電池の導入が必要と考えられる。
現時点、これらはポテンシャルの試算であるが、今後、鉄道GX官民研究会では、鉄道アセットを活用した再エネ導入に関する目標や指標の設定について検討を行う予定としている。
アジア諸国を中心とした世界の鉄道インフラ需要は膨大であり、今後も市場の拡大が見込まれるため、我が国の鉄道事業関連企業による海外展開は一層重要となっている。
ただし、国内で鉄道網がクローズしており、他国との相互直通の必要性がない日本では、これまで国内独自の規格が発達してきた。これに対して、他国との相互直通の必要性がある欧州では、域内共通規格が発達しており、仕様が詳細に規定・明文化されているため、自社の製品の安全性や信頼性等の対外的な説明が容易となっている。
これまでも日本はISO/IECの複数の専門委員会でリーダーを務めてきたが、日本の鉄道インフラシステムの輸出力のさらなる強化のため、日本の技術に基づく国際規格提案を行うなど、国際標準化に関する取り組みを強化する予定としている。
今後、鉄道GX官民研究会では、再エネ等の導入目標や投資額等の検討を行い、2025年夏頃を目途に、鉄道分野のGXに関する目標設定や戦略を取りまとめる予定としている。
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