世界トップクラスの旅客輸送量を持つ日本の鉄道。国交省が設置した「鉄道分野のカーボンニュートラル加速化検討会」は、このほど鉄道分野の脱炭素化に向けた各種の施策や、目標値などを整理した中間とりまとめを公表した。
鉄道は環境負荷の低い輸送手段であり、輸送量あたりのCO2排出量は、旅客では自家用乗用車の8分の1、貨物では営業用貨物車の13分の1である。
我が国の鉄道は、世界トップクラスの旅客輸送量を誇るとともに、分担率も諸外国に比べて大きいため、鉄道分野のCO2排出量は約1,000万トン、国全体の約1%を占めている。
このため国土交通省鉄道局は「鉄道分野のカーボンニュートラル加速化検討会」を設置し、鉄道事業そのものの脱炭素化と、鉄道による脱炭素化を検討してきた。
鉄道分野における電力消費量は215億kWhであり、日本全体の電力の約2%を消費している。このため、これまでも車両の軽量化やLED化による、高効率な車両の導入が進められてきた。
またVVVFインバータ制御の導入によって約75%の省エネが可能となり、すべての旅客車両(新幹線、特急を除く)約3.9万両のうち、最先端のSiC半導体を用いたものは、約4,800両(約12%)に上る(2022年度末時点)。
新幹線車両についても新型車両の導入等により大幅な消費電力の低減を図っており、最新のN700Sでは、0系の最高速度220km/hで走行した場合、消費電力は0系の半分以下に削減している。
また、列車の減速時にモーターを発電機として作動させること(回生ブレーキ)により発生する電力(回生電力)を架線に戻し、これを前後付近の他列車の加速に活用することも広く行われている。これにより、従来の電車ではブレーキ時に熱となり捨てていたエネルギーを有効活用することができ、省エネや朝夕の電力のピークカットの効果が得られる。
ただし、前後付近に加速する別の列車がいない場合は回生電力を活用できないため、上り線と下り線を一括で「き電(電車への電力供給)」することや、蓄電池の導入による有効活用が開始されている。
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