鉄道分野のカーボンニュートラル化はどう進めるべきか、国交省が中間目標を公表法制度・規制(3/5 ページ)

» 2023年05月25日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

鉄道事業者による再エネ発電が拡大

 大手鉄道事業者では、電車の運行に必要な電力を賄うため、自社で発電事業を行う例がある。例えばJR東日本グループでは、年間消費電力量57億kWhの約58%を自社での発電(主に火力と水力)により賄っている。JR東日本が現在保有・出資する再エネ発電規模は約13万kWに上り、2030年に70万kW、2050年に100万kWへと拡大する目標を掲げている。

 また多くの鉄道事業者は、太陽光パネルをホーム屋根や駅舎屋上、車両センター構内に設置し自家消費するほか、自社の配電線を介して鉄道運行に活用している。

 検討会資料によれば、これまでに鉄道事業者が設置した太陽光パネルの面積は70haとのことであり、1kWあたり10m2が必要と仮定すると、設備容量は70MW程度と考えられる。年間発電量は8,000万kWh程度と推測される。

 太陽光発電の設置場所として今後期待されるのが、線路脇の法面や高架構造物の側面である。これらの耐荷重の小さい場所に対しては、次世代型太陽電池であるペロブスカイト太陽電池の活用が期待される。

 仮に線路沿線に平均1m幅のペロブスカイト太陽電池を設置するならば、設置面積は2,800ha、年間発電量は20億kWhと試算されている。

図5.鉄道の未利用領域の活用可能性

 また鉄道事業者は、鉄道施設を強風や土砂崩れ等から守るために植林した「鉄道林」を保有しており、その総面積は1.6万haに上る。

 仮に鉄道林のすべてに標準的な風力発電設備を設置するならば、年間発電量は30億kWhに上ると試算されている。検討会資料では設備容量は記されていないが、仮に設備利用率25%で逆算すると137万kWの設備容量となる。

さらなる鉄道アセットの活用へ

 上述のように、駅舎や車両基地、線路用敷地など、鉄道事業者が保有するアセットを活用した再エネ発電設備の設置のほか、鉄道用変電所や高架下等への大規模蓄電池の設置により、地域におけるレジリエンスの強化が考えられる。

 静岡鉄道では、鉄道架線を活用して、沿線地域で発電した再エネ電力を需要地に送電することなどによる、沿線の防災レジリエンスを高める構想を公表している。

図6.「清水静岡レイルグリッド構想」イメージ図 出典:静岡鉄道

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