鉄道分野のカーボンニュートラル化はどう進めるべきか、国交省が中間目標を公表法制度・規制(2/5 ページ)

» 2023年05月25日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

「非電化鉄道」の脱炭素化をどうすべきか?

 鉄道は電化率が高い交通機関であるとはいえ、電化率は地域により大きく異なり、全国的な電化率は約67%に留まる。非電化区間では通常、化石燃料を用いた気動車(ディーゼル車)が運行されている。

 非電化区間の脱炭素化には以下のような手法がある。

1.蓄電池鉄道車両

JR九州では、架線式蓄電池電車「DENCHA(デンチャ)」が2016年から導入されており、電化区間で蓄電した電力により非電化区間を走行することにより、化石燃料を不要としている。

図4.架線式蓄電池電車 出所:JR九州

2.ディーゼル電動車(ハイブリッド車)

ディーゼル燃料を用いるが、エンジン駆動ではなくエンジン発電式モーター駆動により運行し、燃料消費量やCO2排出量を削減する。また回生ブレーキにより発生した電力を蓄電池に充電し、加速時に利用する。JR九州等で導入されている。

3.水素燃料電池車両

 JR東日本は、水素を燃料とした燃料電池車両「HYBARI」を走行試験中であり、2030年度までの実用化導入を目指している。

 日本は欧州と比べて鉄道の線路幅や車両サイズが小さく、水素貯蔵ユニットや燃料電池装置などの搭載に制約があるため、気動車並みの出力・航続距離を確保することが課題とされる。また、水素の低コスト化や水素インフラの整備、高圧ガス保安法等の規制改革が必要と考えられている。

4.代替燃料

 バイオマス燃料もしくは脱炭素合成燃料を、ディーゼル気動車で利用する。燃料コストの抑制が課題とされる。

 なお現在、鉄道を含む運輸部門に関しては、地球温暖化対策税の対象外(還付措置)とされている。また鉄道や船舶は、軽油引取税についても免税とされている。

運輸部門で還付対象となる石油製品

 この措置は、環境負荷の少ない大量輸送機関としての活用(モーダルシフト)を推進する観点および公共交通機関として国民生活を支えている役割に鑑みたものであるが、鉄道・海運・航空事業者が燃料の脱炭素化に取り組むインセンティブ(経済的メリット)を減殺する面もあるため、今後の炭素賦課金導入に際して、一定の見直しが必要と考えられる。

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