排出量取引制度第2フェーズのベンチマーク方式においては、同業種内の上位X%水準の排出原単位をベンチマークとして設定し、これを5年先まで段階的に引き下げることにより、事業者に予見性を与え、排出削減に向けた投資を促す仕組みとしている。
省エネ法のベンチマーク制度では、製造業等を対象として、目指すべきエネルギー消費効率の水準(ベンチマーク目標)を業種別に定め、その達成を求めている。目標とすべき水準は業種ごとの上位1〜2割に設定され、対象事業者の過半数がこれを達成した場合等に、目標値の見直し(強化)を検討することとしている。
表2のようにソーダ工業では、本制度開始から約10年が経過した時点で対象事業者の過半数が目標水準を達成したことにより、目標の見直し(強化)が行われた。
これを踏まえると、ある時点のトップランナー水準(上位15%程度)に業種全体として到達するまでには、10年程度を要すると考えられる。
基準年度における標準的な排出原単位、つまり平均的な値である「上位50%水準」からスタートして、10年後に「上位15%水準」を達成しようとすると、その中間年である5年後には、「上位32.5%水準」を達成している必要があると考えられる。
よって、排出量取引制度第2フェーズの基準年度(原則2023〜2025年度)から約5年後となる2030年度時点のベンチマーク水準は、それぞれの業種における「上位32.5%」に相当する原単位とすることとした。また、2026年度から2030年度までの各年度のベンチマーク水準については、基準年度と2030年度(図6の例では1.50と1.20)を直線的につなぐかたちで算出する。なお、業種ごとの上位◯%水準は、事業者数ベースのパーセンタイル値ではなく、活動量による重みづけを行って算出する。
ただし、ベンチマーク対象業種の中には、業種上位50%水準と上位32.5%水準が著しく異なるため、2030年度に向けて排出枠割当量が急速に減少する業種もあることが報告されている。このため経産省事務局では、他の業種との公平性を確保する観点から、制度上の措置を別途講じることの必要性について、検討を行う予定としている。
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