排出量取引制度第2フェーズにおいて、ベンチマーク(BM)の適用対象とならなかった排出源については、グランドファザリング(GF)方式による排出枠の割り当てが行われる。
GFにおける割当量の削減率(図7のY%)については、BMによる削減水準との公平性にも配慮して定める必要がある。なおGFによる削減率は、「エネルギー起源CO2」と、相対的に削減が困難な「プロセス由来CO2」で設定方法を分けて考えている。
まずエネルギー起源CO2について、BM対象業種のうちゴム製品等の幾つかの業種では、BM算定式の分母となる「活動量」に製品生産量を用いることが困難であるため、燃料使用量(熱量)を分母とする「燃料ベンチマーク」を採用し、燃料転換を促す案としている。
GFが適用されるエネルギー起源CO2についてもこれと同様に、燃料転換による削減ポテンシャルを見積もることにより、目指すべき削減率の検討を行った。
図8左のように、GFの対象となる分野では、既に4割程度のエネルギーは排出係数の低い都市ガスに転換済みである。今後10年間で、残り約6割のエネルギーのすべてを都市ガス相当の排出係数51.3 t-CO2/TJに転換すると仮定する場合、「年率1.7%」の削減が必要と試算される。
プロセス由来のCO2については、現時点の削減手段は製品収率の改善等に限られるが、収率改善は製品コストダウンの主要策でもあるため、各社では既にかなりの対策が進んでいる。例えば、BM対象となる鉄鉱石の還元や石灰石・ドロマイトの熱分解工程では、上位50%(基準年度)と上位32.5%(5年後の2030年度に達成すべき水準)のプロセス由来排出の原単位の差はわずか1〜2%程度である。
よってGF対象分野についても、生産効率の改善余地はBM対象業種と同程度であるとみなし、2030年度までの5年で1.5%の削減、つまりGF削減率は「年率0.3%」とする案が示された。
排出量取引制度小委員会では次回以降、各社が作成すべき「移行計画」や排出枠上下限価格の具体的水準等について検討を行い、年末頃を目途に2026年度の制度開始に向けた取りまとめを行う予定としている。
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