コラム
» 2009年04月03日 07時30分 UPDATE

「Macは高い」――Appleファンの“神話”を打破したMSの新CM

「スペックで比べればMacもPCも価格は変わらない」「大事なのは価格じゃない、デザインだ」――Macの値段の話になるとMacファンはこう主張するが、Microsoftの新CMはそれに反撃している。

[Joe Wilcox,eWEEK]
eWEEK

 Microsoftの最新テレビCMが、Macの価格をめぐる論争を巻き起こしている。

 わたしはこの前Microsoft Watchで、このCMに登場する、自称「Macを買うほどクールじゃない」ローレンのことを書いた。彼女は素晴らしいCMに出演している。だからMacユーザーはこのCMに対して言い訳がましく反応しているのだろう。そのリアクションは、Microsoftが言おうとしていることを際立たせているだけだ。そう、「Windows PCはMacより安い」ということを。だが怒れるApple擁護派は、このCMをそういうふうには受け止めていない。「MacはPCより高い」ととらえている。彼らはこういう当てこすりに耐えられないのだ。

 わたしはこれまでMicrosoftの広告代理店Crispin, Porter + Boguskyのことをそんなに取り上げたことはないが、今回は違う。ローレンのCMは、Macファンがこの週末に繰り返したAppleの価格設定を擁護する決まり文句を予想し、先回りして打ち破っているのだ。Crispin, Porter + Boguskyは60秒のCMで次のようなすごい離れ業をやってのけた。

  • Macコミュニティーからこれだけの反応を引き出した
  • MacとPCの価格についての議論を盛り上げた
  • Macの価格に関するおなじみの弁護を予測し、打破した

 不思議なのは、MicrosoftがわざわざAppleを攻撃する理由だ。AppleInsiderのある投稿者は次のように考えている。

 MSが、Appleを直接、あらゆる角度から攻撃する必要があると思っていることにちょっと驚いた。「Appleが気がかりだ。われわれの主なライバルだと思う。だから追いかける」と言っているようなものだ。MSのように市場シェアで圧倒的にリードしている企業がこういうことをするのは、弱さの露呈か、狭量か、Appleの考えへの熱狂的な支持か、あるいはそのすべてだと思える。

 このCMは確かに、Macの価値が認知されるなど、裏目に出る恐れもある。だが、MicrosoftにはAppleを攻撃する十分な理由がある。

  • 優れた広告はステレオタイプを打破する。CMの主人公ローレンはスタイリッシュな赤毛の女性で、フォルクスワーゲンを運転している。Macを買いそうなキャラクターだが、PCを選んでいる

  • 最高のCMは話題になり、議論を生む。Crispin, Porter + Boguskyは口コミマーケティングが専門だ。Macの価格がMacファンからの反応を引き出すのは確実だったし、実際にリアクションが起きている

  • 素晴らしいCMの中には、製品を比較し、対比するものもある。人々は選択を好むが、意思決定を好むとは限らない。MicrosoftのCMは価値の選択と、満足のいく理由を提示している

 CMでは、ローレンは予算1000ドルで17インチのノートPCを探し、699.99ドルの「HP Pavilion」にたどり着く。Apple Thoughtsのビンセント・フェラーリは、このノートPCを「ローレンが選んだポンコツ」と呼んでいる。率直な物言いだ。ビンセントはさらに、価格を購入の理由にするのはくだらないとこき下ろし、17インチのMacBook Proの方がどれほど優れているかを長々と語っている。彼はこう続けている。

 ちょっと現実と向き合ってみよう。価格やディスプレイの大きさといった下らないことでAppleコンピュータをWindowsコンピュータと比較するのは大概が労力の無駄だ。皆、価格だけで買っているんだろうか? 17インチMacBook Prpを安っぽい特価品のHPモデルと比べたら、確かにHPの方が価格の点では勝っている。だが、PCを買ってから何に使うかが重要じゃないのか?

 Apple Blogでは、トム・リースマンがMacの価格について古典的な弁護をしている。

 PCベンダーは安い価格で安くない部品を提供しているとMicrosoft(そしてHP)はほのめかしているが、それはたわ言だ。PCベンダーは――いつもそうだが――古いCPUと貧弱なグラフィックスチップをでかいケースに入れて売っている。バッテリーも大して持たないし、世界一周の旅から戻ってきたばかりのスーツケースみたいにステッカーがべたべたはられている。

「Macは高くない」の嘘を暴く

 では、Macの価格に関する古典的な弁護はどんなものだろうか?

  • スペックで比較すれば、MacとWindows PCの価格は同等だ
  • 購入の基準になるのは価格だけではないし、価格はたいてい主な決め手にならない
  • 高いお金を払ってMacを買えば、より多くのものが手に入る
  • 重要なのはデザイン。Macを買う人は、Windows PCよりデザインがいいから買っている

 こうした主張の正当性について議論はしない。わたし個人の意見や分析は重要ではない。これはCMの話であって、MicrosoftのCMが古典的な弁護にどう反撃しているかという問題なのだから。

「Macの価格はPCと変わらない」

 Mac擁護派は、スペックで比較すればMacのコストはPCと変わらないか、PCより安いということを示すためにシステム構成を比べている。ローレンはノートPCに求める条件を明確に示している。「スピード、使いやすいキーボード、17インチディスプレイ」。そして予算は1000ドル。だが彼女がMacを見に行ったときには、このスペックで予算内のマシンは見つからなかった。ローレンにとってMacは高過ぎたのだ。17インチディスプレイのマシンを探しにAppleストアに行った後、彼女は「予算を2倍にしないとね。そんなの無理だけど」と話している。

 こういったことを数秒でうまく表現するのは難しいが、このCMは見事にやってのけている。Microsoftの広告代理店は、比較の基準をこれらの3つの条件と価格に絞った。価格を中心に、この4つの条件で見れば、Macの方が高い。

「価格は重要ではない」

 Macの価格を擁護する人たちは、Macに高いお金を払うのはハードのスペック以外のものも考慮に入れているからだと主張する。だが、逆もまた真なり。安いお金で欲しい機能だけを手に入れたいという人もいる。ローレンが選んだノートPCは予算の1000ドルよりも300ドル安い(税抜きで)。彼女は699.99ドル(税抜き)だけ払うことを選んだ。彼女の欲しい機能を搭載したノートPCは、予算よりずっと安かった。「お金を多く払うほど多くのものが手に入る」というMacファンの主張が本当なら、ローレンは予算を全部使っていただろう。

 Microsoftの広告を批判している人は、同社は価格だけで決めさせ、ほかの条件を考慮しなかった――それも、コンピュータの購入や、MacかWindowsかの選択において重要な条件を――と主張している。これは嘘だ。ローレンは選んだHP Pavilionについて「わたしの条件を全部満たしている」と言っている。彼女の条件は価格だけではなかった。

Macの方がいい

 Appleの価格設定を擁護する人は、Macの方が得られるものがずっと多いと主張する。だがそれは、ユーザーがより多くのものを求めているという前提に立っており、この前提は間違いだ。Microsoftの広告は、Macが提供するものがWindows PCより少ないことをうまく見せている。「1000ドルで買えるマシンは1つしかないわ。それも13インチよ」。ローレンはAppleストアから出てきてこう言った。彼女はもっと大きなマシンが欲しかったのだが、Appleでは小さなマシンしか買えない。彼女の基準で言えば、Macの方がいいということはないのだ。

 ビンセントはHP Pavilionを、Bluetoothも「N」(802.11n)ワイヤレス技術もないとけなしている。よくある批判だが、MicrosoftのCMはこれを覆している。彼は、AMD Turionプロセッサは非力で、ディスプレイ解像度はたったの1440×900だと文句を言っているが、それがどうした。ローレンが最初に挙げた条件は「1000ドル、17インチディスプレイ、使いやすいキーボード」だ。たぶんBluetoothや「N」は気にしていないのだろう。もっとお金を出せば、これらの機能も手に入ったのだろうが。ローレンは冗談を言って、CMの最後に「まさに欲しいものが手に入った」と話している。欲しいのはそれだけだ。

重要なのはデザインだ

 わたしはAppleのデザインを絶賛しているMacファンをたくさん知っている。彼らによると、デザインは、MacをWindows PCから隔てる最も重要な特徴の1つだそうだ。人々はデザインのために余分にお金を払っているというのだ。だが、好みは人それぞれだ。ローレンはBest BuyでWindows PCを探しているときに、「このマシン、見た目がいいわ」と絶賛していた。ローレンにとってデザインは重要だったし、彼女はデザインにお金を払うつもりがあった。彼女の好みに合うマシンが、たまたま699.99ドル――17インチのMacBook Proより2100ドルほど安い――だったのだ。

原文へのリンク

Editorial items that were originally published in the U.S. Edition of “eWEEK” are the copyrighted property of Ziff Davis Enterprise Inc. Copyright (c) 2011. All Rights Reserved.

Loading

ピックアップコンテンツ

- PR -