連載
» 2010年03月15日 13時05分 UPDATE

研修に行ってこい!:顧客訪問はペアで行く(その1)

「営業同行」というと、営業担当者の仕事を上司がチェックしに行くようなイメージがあります。顧客にとっても「なんで2人で来るんだろう」とメリットがよく分からないこともあるみたい。しかし、この営業同行を上手に活用することで、業績を向上できるのです。

[原田由美子,Business Media 誠]

 “営業同行”をイメージすると、営業担当者の仕事を上司がチェックしに行く、あるいは、上司が部下の仕事のクロージングに行く――ようなケースでしょうか。いずれにせよ、営業担当者にとっては気の重い場面を思い浮かべる人が多そうです。

 訪問を受ける顧客にとってもメリットが感じられないことが多く、日頃付き合いのある営業マンの“顔を立てる”気持ちで、営業同行を受け入れるようです。顧客から見れば、「誰のための訪問なんだろう」という気持ちになりかねません。

 しかし同じ営業同行でも、業績につなげられる企業もいます。顧客との関係性強化や社内の人材育成機会として効果的に活用しているのです。

 今回と次回は、こうした営業同行の着眼点を考えていきます。顧客が喜ぶ営業同行とはどんなものなのでしょうか。

顧客と最も接点が多いのは誰?

 ある住宅関連の商社のお話です。住宅市場は大幅に拡大する余地が少なく、ビジネスの機会そのものが縮小傾向。その中で業績を上げ続けていくために、さまざまな取り組みや工夫が求められる仕事です。競合も多く、気を抜くとすぐに他社に仕事が流れてしまいます。

 もちろん、営業担当者は日夜努力を重ねていました。ですが、営業エリアが広い上に顧客の数も多いため、なかなか全ての顧客を回れません。大きな仕事に追われていると、小さい仕事を継続的に受けている顧客へのフォローができない状態になります。いつしか、顧客との連絡は突発的な問題やクレームが中心になっていきます。

 実際に仕事の流れを洗い出してみると、営業担当者の外出中、顧客からの問い合わせ対応は、全て営業アシスタント職が担っていました。問い合わせは、新規案件だったり、商品情報の確認だったり、在庫の問い合わせだったりと多岐に渡ります。見積依頼、納期の確認のほか、クレームや技術的なトラブルの連絡もありました。

 問い合わせに対応した者を調べてみると、6〜7割は営業アシスタント。営業担当者に引き継ぐ問い合わせは、大きな仕事になりそうなケースや、問題が起こった時の3割ほどだと分かりました。

 そこで、社内の問題の洗い出しとともに、顧客にもアンケート調査を実施。すると、顧客が期待するサービスとして「日常的な問い合わせに迅速に対応してくれること」が上位に入ったのです。

 この商社はこれまでも、問い合わせ対応のレベルはそう悪くありませんでした。しかし問題はそこではなかった。顧客との接点が多いのは営業ではなく、現実にはアシスタントであることだったのです。そこに気付いてからは、顧客の満足度を高めるために次のような工夫をはじめました。

キャンペーンの実施

 それは、営業担当者が訪問する際に、アシスタント職を紹介するキャンペーンを展開したことです。それまでアシスタント職は職場から出ることもなく、名刺も持っていませんでした。また、顧客がどのような会社なのか、どのような人なのかを知りません。

 そのため、電話やメールで問い合わせを受けても、“いつも連絡をくれる人”、“たまに連絡をくれる人““いつも至急の対応を求める人”“○○さんでないとダメな人”というように、顧客の電話やメールでの印象を把握するだけにとどまっていました。

 しかし、顧客先に営業担当者と一緒に行き紹介されたことで、その会社がどのような会社なのか、お問い合わせを下さる方がどのような方なのかがわかり、今までの声やメールだけで連絡をもらっていた時と比較して、お客様との距離が一気に縮まる効果がありました。

期待以上の効果とは?

 お客様との距離が縮まると、電話やメールで連絡を頂いた時に、会社の状況を思い浮かべながら労いの言葉がかけられたり、面談の場面で意気投合した話題を投げかけられるなど、コミュニケーションが取りやすくなる効果が生まれました。それに加え、顧客の状況に合わせた対応をしようと、工夫も生まれてきました。

 また顧客からも、「顔が分かっていると安心」「以前よりも話をしやすくなった」「営業の○○さんよりいいや(笑)」という評価にも繋がりました。もちろん、連絡が取りやすい会社に仕事を頼もうという心理が生まれることは、言うまでもないでしょう。

 さらにこのキャンペーンは、社内的にも副次的な効果を生みだしました。それは、営業担当者と一緒に、1日かけて地域の端から端まで回り営業活動を見ることで、営業の仕事の大変さや、なぜ連絡が取りにくいのかが分かったことです。相手の立場や気持ちが分かれば、自分ができる工夫の余地も生まれてきます。電話をするタイミング、メールの書き方、報告する仕事の中身など、自然と相手の立場に立って仕事を進める意識が芽生え行動するようになっていきました。

マインドシェア

 “マインドシェア”という言葉をご存知でしょうか?顧客がある商品やサービスをどこから買おうか、あるいはどれにしようかと考えた時に、買い手のイメージに 思い浮かぶ割合を指します(詳細は@ITの記事をご覧ください)。言葉を変えると顧客の気持ちをどれだけ掴んでいるかの割合とも言えます。

 顧客(発注担当者)のマインドシェアを高めることの重要性は、多くの企業が認識しています。そのため、顧客との間接的な接点となるブランド力を高める努力は、どの企業も取り組んでいるでしょう。

 しかし、顧客との直接的な接点については、まだまだ努力の余地がありそうです。日頃は気の重い営業同行の機会も、視点を変えるとお客様にも、働く仲間にも喜んでもらえるチャンスになる上、マインドシェアも上げるきっかけとなるのではないでしょうか? 誰にとってもメリットのあるお客様との接点、見つけてみてくださいね。


著者紹介:原田由美子(はらだ・ゆみこ)

 大手生命保険会社、人材育成コンサルティング会社の仕事を通じ、組織におけるリーダー育成力(中堅層 30代〜40代)が低下しているという問題意識から、2006年Six Stars Consultingを設立、代表取締役に就任。現在と将来のリーダーを育成するための、企業内研修の体系構築、プログラム開発から運営までを提供する。

 社名であるSix Starsは、仕事をする上での信条として、サービスの最高品質5つ星を越える=クライアントの期待を越える仕事をし続けようとの想いから名付けた。リーダーを育成することで、組織力が強化され、好循環が生まれるような仕組みを含めた提案が評価されている。


Copyright© 2016 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

Loading

ピックアップコンテンツ

- PR -

注目のテーマ