OJTは何か特別な機会を設けるのではなく、実際は日常のあらゆる場面に行うものです。今回は、OJTの目的と機会のとらえ方について、事例を交えてご紹介します。
OJTというと、「何か特別な機会を設けて指導しなければならない」という印象を持っている人も多いのではないでしょうか。しかし実際は日常のあらゆる場面がOJTの機会です。今回は、OJTの目的と機会のとらえ方についてご紹介いたします。
OJTの目的は、自社の長期戦略に基づいて、その事業や職務に必要な能力を、日常業務の中で意図的、計画的、継続的に向上させていくことにあります。言葉を変えると、日常業務の中で、能力向上につながるシチュエーションを見つけ“意識的に”取り組むことといえるでしょう。意識する、しないでは大きな違いが表れます。ある大手企業の営業部門の事例を元に紹介していきます。
この会社では、職位に応じた役割と、期待される仕事の水準を明確化しています。営業部門に必要な能力はさまざまですが、その会社では特にプレゼンテーション能力を重要視しています。プレゼンテーションと一口に言っても、期待される水準によって、必要な能力は大きく違います。その違いを下表に整理したので、確認してください。
職務 | 役職としての役割 | プレゼンテーション力を活用する機会 |
---|---|---|
営業部長 | 他部署との連携・交渉 顧客トップとのリレーション |
・企業の役員層を対象とした研修会講師 |
副部長 | 自部署のマネジメント 営業支援 |
・企業の窓口担当者を対象とした勉強会講師 ・部門を越えた研修での講師 |
課長(ベテラン) | 事業部門研修講師 自チーム運営・部下育成 |
・企業の窓口担当者複数名を対象に自社商品の紹介 ・事業部門内での研修での講師 |
課長(中堅) | 職場内研修講師 自チーム運営 |
・企業の窓口担当者複数名を対象に自社商品の紹介 ・職場内研修講師 |
課長(新任) | 自チーム運営・部下育成 業務改善提案活動推進 |
・企業の窓口担当者複数名を対象に自社商品の紹介 ・職場内でのファシリテーション |
リーダー | 自己の目標達成 後輩指導・支援 |
・企業の窓口担当者を対象に、自社商品の紹介 ・マンツーマンでの後輩指導 |
若手社員/新入社員 | 自己の目標達成 | ・企業の窓口担当者を対象に自社商品の紹介 |
上記のように考えると、自分が現在期待されている役割とその水準、次に自分がどのレベルを期待されるようになるのかがつかみやすくなります。
一般的には、人事制度で定められているようですが、実際の仕事とズレているケースがあるので、職場内で整理し直すことをオススメします。
それでは、期待される水準に能力を引き上げるために、どのような取り組みを行っているのでしょうか? その具体例をご紹介します。
この企業では、プレゼンテーション力を高めるために、表現力と専門知識の向上に力を入れています。しかし研修のような特別な場面を設定し、能力向上を図っているわけではありません。業務場面を洗い出し、日常的に訓練や知識を吸収できる場面を見つけて、日常業務の一環として毎日行っているのです。
以下に業務場面とテーマ、頻度、誰が担当するのかを整理しましたので参考にしてください。
業務場面 | 担当 | テーマ | 頻度/時間 |
---|---|---|---|
全体朝礼 | 課長 | 1. 情報共有 ・業界動向、顧客動向、商品知識 など ・方針伝達、業務手順の見直し など 2. 実習 ・ロールプレイング ・3分間スピーチ ・商品に関するテスト問題 3. その他 |
毎朝/約20分 |
面談 | 課長 | 進捗確認(目標設定、進捗確認、課題抽出・対策検討) | 毎日朝夕/約5分 |
顧客訪問 | 課長/リーダー | 1. 面談の進め方 2. 面談時のフォロー 3. 役職者との人間関係構築 |
週1回/半日 |
会議 | 課長/リーダー | 1. 専門知識の補完 2. 表現の補完 |
不定期/30分〜1時間 |
有志勉強会 | リーダー/若手 | 顧客情報・商品知識・売り方の情報交換会 | 不定期 |
リーダー/若手 | 専門試験の勉強会 | 試験前/業務後 | |
整理してみると、日常業務の中で取り組めそうなところが出てくるのではないでしょうか? その場面を見つけ、水準を明確にし、日々訓練を行うことがOJTです。意識的に取り組むか否かで、1カ月、3カ月、半年後に大きな差が生まれます。
今回の事例のように、ありとあらゆる場面を見つけて取り組むことはできなくても、日常行っている業務の中で、水準を決め、意識して取り組んでいくことで結果は違ってくるはずです。是非1つでも機会を見つけて取り組んでみてくださいね。
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大手生命保険会社、人材育成コンサルティング会社の仕事を通じ、組織におけるリーダー育成力(中堅層 30代〜40代)が低下しているという問題意識から、2006年Six Stars Consultingを設立、代表取締役に就任。現在と将来のリーダーを育成するための、企業内研修の体系構築、プログラム開発から運営までを提供する。
社名であるSix Starsは、仕事をする上での信条として、サービスの最高品質5つ星を越える=お客様の期待を越える仕事をし続けようとの想いから名付けた。リーダーを育成することで、組織力が強化され、好循環が生まれるような仕組みを含めた提案が評価されている。
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